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【書評】jmedmook84 ジェネラリストはここを押さえる!『日常生活に潜む急性中毒24の対処法』

No.5175 (2023年07月01日発行) P.61

鵜飼 卓 (兵庫県災害医療センター名誉顧問)

登録日: 2023-07-01

最終更新日: 2023-06-30

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十把一絡げにするならば「急性中毒」は少なくはない疾患群であろうが,個々の薬毒物による中毒の発生はむしろ稀であって,集団発生事例でもない限り,1人の臨床医が特定の物質による急性中毒患者に何例も遭遇することも稀である。むしろ「こんな物質の急性中毒患者を診るのは初めてだ」という体験をした臨床医が多いのではなかろうか。

約50年前にはわが国に中毒関連の書物はほとんどなく,中毒というと,やみくもに胃洗浄が行われる時代であった。その頃,蚊取り線香を2巻食べたという統合失調症の女性と,消毒薬「ヒビテン®」を誤飲した幼児とが続けて搬送されてきて,その対処法に大いに困惑したことが,私自身が急性中毒に関心を抱いたきっかけとなった。

今日では急性中毒に関する書籍も数多く出版されており,また,日本中毒情報センターが365日24時間体制で電話相談に応じてくれるので,容易に毒物情報や中毒治療法の問い合わせをすることが可能となっている。しかし,危険ドラッグに象徴されるように,時代とともに変遷を遂げる中毒起因物質も数多く,他方,徐々にではあるが中毒対処法のevidenceが積み重なり,以前の常識が覆っていることも少なくない。

本書は急性中毒の最新知見に基づいて,総論の「急性中毒診療の原則」に続き,各論は比較的ポピュラーで,かつ重症化しがちな24品目による中毒について,その特徴や「やるべきこと」と「やってはならないこと」,「過去の常識,今の非常識」,「専門医に送る基準」という並びで,大変わかりやすく記述されている。したがって,滅多に遭遇することがない中毒患者を初めて診ることになった現場の医師達にとって,きわめて有用な書物である。すべてのER診察室に常備されるならば,研修医やジェネラリストにとって急性中毒の手ごろな解説書として役立つことは間違いないだろう。

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