転倒の定義はいろいろあるが,1例として挙げると,「自分の意思に反して,足底以外の身体の一部が地面あるいは床につくこと」である。一方,骨折とは「外力によって骨の連続性が断たれた状態」である。10回転倒すると1回骨折するという報告がある。
転倒の要因は,内的要因,外的要因に分類される。内的要因は,加齢,疾患,薬物などによるものである。医原性疾患や薬剤有害事象は,医原性要因と言える。外的要因は,段差や履物など環境によるものである。自宅の環境整備を行うことで,転倒しにくい環境にできる。最も重要な転倒の危険因子は転倒の既往であり,最近の転倒,繰り返す転倒を認める場合には,再転倒のリスクが高い。
骨折の原因の大半は転倒である。転倒後,転倒部位に疼痛,圧痛,腫脹,熱感,運動障害のいずれかを認める場合には骨折を疑い,単純X線撮影検査を行う。転倒直後の検査で明らかな骨折を認めなくても,疼痛などが続く場合には骨折を疑い,2~3週間後に再度の単純X線撮影検査を行う。高齢者では,大腿骨近位部骨折,脊椎圧迫骨折,上腕骨頸部骨折,橈骨遠位端骨折を認めやすい。転倒や明らかな外力がなくても,骨粗鬆症の高齢者では骨折を認めることがある。
日本老年医学会と全国老人保健施設協会が作成した「介護施設内での転倒に関するステートメント」1)が,在宅でも参考になる。転倒を100%予防するためには,寝たきりで床上生活を行うことが必要であり,生活機能やQOLがとても低くなる。そのため,転倒リスクはあるが,可能な範囲でリスクを軽減するのが現実的である。以下にステートメント1~4を挙げる。
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