在宅で遭遇する皮膚疾患の中で,主となる湿疹・皮膚炎,白癬,水疱症,疥癬について述べる。治療方法はそれぞれ確立しているので,重要なのは診断の確定である。
湿疹:在宅では皮脂欠乏による湿疹(体幹や四肢の乾燥しやすい部位に好発する紅斑や丘疹)やうっ滞性皮膚炎(下腿に発赤腫脹,色素沈着,かゆみを生じたときに潰瘍化する)が多い。
足白癬・爪白癬:湿疹や,単なる肥厚爪との鑑別が難しいことも多い。不要な爪白癬の治療が行われている例もみられる。理想的には患部から鱗屑や水疱,崩壊した爪などを採取してKOH直接鏡検法にて白癬菌を検出した上で治療を開始する。鏡検ができない場合,検査キット(デルマクイックⓇ爪白癬)を用いて爪中の白癬菌抗原を検出することによって診断することも可能である。
水疱症:自己免疫性水疱症である水疱性類天疱瘡の頻度が高い。かゆみが強く,緊満性水疱がみられれば診断は容易であるが,水疱形成が明らかでない場合もある。正式には日本皮膚科学会が策定しているガイドライン1)に従い,皮膚生検や蛍光抗体法による自己抗体の証明が必要であるが,在宅では保険が適用されている血中抗BP180抗体の検出によって判断することが多い。
疥癬:ヒゼンダニが人の皮膚に寄生し,虫体や卵,糞などにアレルギー反応を起こして発症する。結節や,手や足のしわの部分に多く生じる疥癬トンネルが特徴的である。同部からダニの虫体や卵を検出するか,ダーモスコピーでトンネルをみつけて診断する(ただし,ダーモスコピーによる診断は保険請求できない)。重症型疥癬(角化型疥癬)は免疫力が低下した宿主に発症し,手足,臀部,肘頭,膝蓋などにざらざらした汚穢な角質増殖が観察される。通常型疥癬は強いかゆみを生じるが,角化型ではかゆみがない場合もある。角化型である場合は既に周囲に感染している可能性が高く,隔離などの十分な対応が必要である。
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