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【書評】jmedmook84 ジェネラリストはここを押さえる!『日常生活に潜む急性中毒24の対処法』

No.5168 (2023年05月13日発行) P.68

坂田育弘 (ベルランド総合病院総合急病救急センター(元近畿大学医学部救急医学教授・救命救急センター長))

登録日: 2023-04-03

最終更新日: 2023-04-03

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病院ERでみられる光景を紹介します。

救急隊員:「火事現場から60代の男性傷病者を搬送します。意識レベルJCS―Ⅱ群ですが,他のバイタルサインの異常はみられません。SaO2はルームエアーで95%です。両手Ⅱ度熱傷がみられますが,他の体部にはみられません」

ER医師A:「搬送を受けます。5分後の病院到着ですね」「看護師さん,火事現場から患者が搬送されますが,熱傷範囲は2%程度,意識レベルⅡ群だからCO中毒が疑われるので高流量酸素投与,点滴ルート確保の準備をして下さい」

ER医師B:「現場ルームエアーでSaO2 95%にしては意識レベルが悪すぎると思います。何か他の原因があるのではないですか」

ER医師A:「薬物中毒も疑われるので,現場に服毒した薬物などがないか確認してもらい,中毒物質簡易診断キットも準備しましょう」


近年,わが国の医療は専門医制度により医学教育においても専門分化された教育が主流となっている。その中で中毒領域の医学教育は遅れていると言わざるをえない。一方,日本中毒学会が誕生して半世紀近くとなり,2011年度より中毒診療専門職として“認定クリニカル・トキシコロジスト制度”を立ち上げ,中毒専門医療職が一部の医療機関で活躍している。

しかし,わが国で中毒傷病者が中毒専門医療職のいる医療機関で診療されるのはほんの一部であり,大部分は一般の救急病院や救急外来のある医療機関で診療されている。そして,その担い手は内科診療医,救急医などのジェネラリストである。

本書は中毒診療における大部分の担い手となるジェネラリストに有用な中毒診療情報が満載され,解りやすく解説されている。

総論では,ジェネラリストが急性中毒傷病者の診療の際に知っておくべき基本的な診断法と治療を総括的にまとめている。

各論では,農薬・ガス・家庭用品・産業用品・自然毒・薬物濫用・医療用医薬品に分けて,医療現場でよくみられる24の中毒物質について,以下の①から⑥までの内容が簡潔にまとめられており,日常の医療現場で十分に診療に役立つ内容である。

①中毒物質の成分や生体内代謝の特徴

②成分による症状の特徴と対応する検査内容

③軽症から重症のすべてにおける初期治療から集中治療に至る治療法

④特に初期治療においてやってはいけない禁忌事項

⑤中毒学の歴史の中で常識的な中毒物質への考え方と,現在の常識に反する治療の解説

⑥ジェネラリストとして診療の限界を判断し,クリニカル・トキシコロジストのいる救命救急センターなどへ早期に転送する基準

本書は,ERや一般外来においてジェネラリストの中毒診療に役立つ内容が解りやすく簡潔に解説されている。さらに,クリニカル・トキシコロジスト資格を持つ中毒専門医にとっても診療現場で役立てることができる内容である。1次から3次救急医療のすべての救急医療現場をはじめ,総合診療科外来にも備えておくべき中毒診療の参考書である。

本書には電子版も付いており,本書の内容を医療現場で即時に閲覧することができる。

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救急医療体制については、1次から3次まで幅広く患者さんを受け入れています。
特に3次救急患者さんに関しましては、症状に応じて長崎医療センター及び救急隊と連携をとりながら、必要に応じた救急対応を行っています。また、2次までの救急患者さんに関しては、専門医と総合医が協力し対応しています。
救急医療についても二次救急を担っています。緊急の大血管手術やバイパス手術も行っており、長崎県内外から高い評価を受けています。
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