登録日: 2023-02-24
最終更新日: 2023-02-24
脳卒中後のリハビリテーションは有用だが、交通手段やスケジュールの都合で施設リハビリに参加できない患者も存在する。また身体機能の低さゆえに参加を忌避する患者もいるという。さらにリハビリテーションで身体状況が改善しても、患者日常生活の改善程度、あるいは生活を支える介護士の負担などは必ずしも把握されていない。
このような背景のなか注目されるのが、遠隔リハビリテーション(テレリハビリ)である。しかしランダム化比較試験(RCT)22報を対象とした2020年のコクランレビューではテレリハビリの有用性は確認されていない[Laver KE]。
これに対し、従来型のテレリハビリと異なるIT技術を活用した、多職種が参画するバーチャルクリニック(脳卒中ケア多職種参画バーチャルクリニック:VMSCC)によるテレリハビリならば、日常生活における患者の「自己効力感」(自分がある行動を遂行し得るという認識)を改善できるようだ。2月8日から米国ダラスで開催された国際脳卒中学会で、香港から報告された。報告者は香港中文大学で看護学教授を務めるJanita Pak Chun Chau氏である。
解析対象となったのは、18歳以上で脳卒中発症から3カ月以内の274例である。香港の10公立病院から登録された。コミュニケーションに問題のある例は除外されている。平均年齢は62.3歳、男性が61.2%を占めた。84.7%が脳卒中初発、NIHSS「0-4」が83.0%を占めた。
これら274例は通常リハビリテーション群と、それにテレリハビリを加えた2群にランダム化され、6カ月間観察された。
評価項目は脳卒中自己効力感質問票(Stroke self-efficacy Questionnaire:SSEQ)で測定した、リハビリ前後の自己効力感である。
テレリハビリの概要は以下の通り。
(1)看護師との患者都合に合わせた月1回のビデオ面談
(2)タブレット使用オンライン情報サイトへのアクセス→12分野にわたる新規作成89本のショート動画(10時間)
・患者・介護者双方に有用な情報を提供
・他職種が連携して制作
・ビデオ面談ではどの動画を見るべきかの指示も
・タブレットの使い方は試験開始時に介護士が家まで赴き指導
(3)家庭血圧測定結果の自動送信→看護師がチェック
その結果、テレリハビリ追加群では通常リハビリ群に比べ、3カ月後のSSEQには有意差を認めないものの、6カ月後では4.6ポイントの有意改善を認めた。
本研究は今後、さらに長期の観察を続けるという。
なお当初はテレリハビリが介護士に及ぼす影響も検討予定だったが、コロナ禍で十分な人数が登録されず、検討できなかったとのことだ。しかしコロナ禍の沈静化を見据え、これから参加介護士も増やしていくつもりのようである。
本研究には申告すべき利益相反はないとのことだ。