株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【書評】『間(あわい) 〜産婦人科医 那須悠介のカルテ〜』「猫山先生」のイメージとはまったく違う,実にリアルな医療小説

No.5129 (2022年08月13日発行) P.66

仲野 徹 (隠居・大阪大学名誉教授)

登録日: 2022-08-10

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

どんな本なんやろ。日本医事新報の読者にはおなじみの猫山先生,じゃなくて,その作者の茨木保先生が小説を上梓された。漫画が面白いからといって小説も面白いとは限らない。書評をお引き受けしたものの,失礼ながらちょいと心配しながら読み始めた。

まったくの杞憂だった。あまりに面白くて,文字通り一気に読み終えた。「猫山先生」のイメージとはまったく違って,実にリアルな医療小説である。大きな事件が起こるわけではない。だが,それだけに作者の力量が問われる作品だ。

ほとんど知らなかったが,産婦人科の日常というのはきっとこういうものなのだろう。医師の書いた医療小説であっても,おいおいそれはちょっとなかろうと思うことがあったりするのだが,そんな違和感はゼロ。茨木先生の医学知識がいかに正確で幅広いものであるかがよくわかる。意外,と言ったら叱られるか。

主人公は奈良県立大和医科大学出身の研修医・那須悠介である。発達障害を思わせる不器用な先生だが,本人は常にいたって真剣だ。ちょっとしたミスで大学を追われるが,赴任先の病院には医学生時代から憧れていた先輩の女性医師・葉山美智留がいた。

新人のおかしがちな医療ミス,きわめて稀だけれどありえる症例,患者に寄り添いすぎるがゆえの医療事故,LGBTQの問題,患者さんの看取りなど,じつに様々なテーマがわかりやすく,そして心温まるエピソードとして描かれていく。医師としての成長と並行して進行する,あまりにウブな那須の初恋は,まったく予想もしなかった展開を見せる。そして最後,タイトルの『間(あわい)』が何を意味するかが明かされる。

緊張感あり,笑いあり,涙あり,これまでになかった医療小説だ。ただ,ひとつだけ気になることがある。本物語は実在の人物とは一切関係ないと書かれている。でも,ひょ,ひょっとして,那須にはモデルがいて,茨木先生の若い頃やったりするんとちゃいますのん?

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

公益社団法人 地域医療振興協会 市立大村市民病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 総合内科・消化器内科・呼吸器内科・神経内科・整形外科 等 若干名
勤務地: 長崎県大村市

急性期から回復期、維持期までの疾患の治療・管理はもとより、予防医学としての健診事業にも力を注いでいます。
ハイケアユニットから地域包括ケア・回復期リハ病棟まで有しており、地域の皆様に対して急性期から回復期まで切れ目のない医療、充実したリハビリサービスを提供できる体制が整っております。
基幹型臨床研修指定病院として医師の教育にも寄与しています。当協会のコンセプトの1つである離島医療の支援も積極的に行っています。

救急医療体制については、1次から3次まで幅広く患者さんを受け入れています。
特に3次救急患者さんに関しましては、症状に応じて長崎医療センター及び救急隊と連携をとりながら、必要に応じた救急対応を行っています。また、2次までの救急患者さんに関しては、専門医と総合医が協力し対応しています。
救急医療についても二次救急を担っています。緊急の大血管手術やバイパス手術も行っており、長崎県内外から高い評価を受けています。
なお、日当直体制では、内科・外科系及び循環器系で 救急体制を整えています。
現在、内科・外科系の日当直体制は、内科医師が火曜日・木曜日・土曜日 の当直帯及び土曜日・日曜日の日直帯、外科系医師が月曜日・水曜日・金曜日・日曜日の当直帯に救急対応を行っています。
また、大村市夜間初期診療事業(内科系・小児科)に参画しています。
平成29年度より新病院にて診療を開始しております。
●大村市の人口は約99,500人(令和7年3月末日現在)で、県内13市で唯一人口が増加しています

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top