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熱傷に対するステロイド内服療法は有効か【有効と言うには至らず,エビデンスの蓄積が望まれる】

No.4823 (2016年10月01日発行) P.59

土井直孝 (和歌山県立医科大学皮膚科)

古川福実 (和歌山県立医科大学皮膚科教授)

登録日: 2016-10-04

最終更新日: 2016-10-06

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熱傷へのステロイドの使用は以前から議論となっているが,過去の検証では「効果なし」との報告ばかりである。たとえば,熱傷に対するクロベタゾールとプラセボの抗炎症効果の二重盲検ランダム化比較試験で,両群間に有意差はみられなかったとの報告がある1)。しかし,熱傷に対してステロイドが使用される場面はしばしばみられる。

マウスにⅢ度熱傷を与えた場合,受傷後数時間で炎症性サイトカインが上昇するという報告がある2)。ステロイドを熱傷初期に使用することについて,マウスなどを用いた対照実験では,Ⅲ度熱傷にプレドニゾロンの全身投与を行ったところ,コントロール群のほうが創傷治癒が早く,サイトカインも低値であった3)。また,間葉系幹細胞(MS Cs)を移植したマウスでは熱傷の治癒が促進し,サイトカインが低値であったと報告されている4)。これらのことから,熱傷早期に炎症性サイトカインを抑制することは創傷治癒に有効であると考えられるが,一方でステロイドの投与では期待しているようなサイトカイン抑制の効果が示されていない。少なくとも,熱傷に対してステロイドの全身投与は有効であるとは言えず,外用に関しても,経験則に基づいた使用のレベルを脱していない。エビデンスの蓄積が望まれる。

【文献】

1) Pedersen JL, et al:Br J Anaesth. 1994;72(4): 379-82.

2) Kubo H, et al:Leg Med(Tokyo). 2014;16(1):8-13.

3) Takano K, et al:Biotherapy. 1998;12(5):624-6.

4) Zhang J, et al:Int J Clin Exp Pathol. 2015;8 (5):5129-36.

【解説】

土井直孝,古川福実 和歌山県立医科大学皮膚科 教授

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