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脂漏性角化症[私の治療]

No.5280 (2025年07月05日発行) P.38

杉田和成 (佐賀大学医学部内科学講座皮膚科教授)

登録日: 2025-07-07

最終更新日: 2025-07-01

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  • 脂漏性角化症は,表皮細胞の良性腫瘍で,中年以降の顔面,頭部,上背部などに生じやすい。直径1~2cmの灰褐色~黒褐色の隆起性結節として認める。20歳代から出現しはじめ,80歳以上ではほとんどの人に認める。腫瘍は,表皮や毛包漏斗部の角化細胞から発生し,一般的に良性であるが,稀に内臓悪性腫瘍の徴候として急激に多発する場合もある(レーザー・トレラー徴候)。皮膚病理組織学的には,肥厚型,角化型,網状型(腺様型),クローン型,被刺激型,鋸歯状型などに分類される。

    ▶診断のポイント

    脂漏性角化症の診断は臨床所見に基づき,ダーモスコピーが有用である。典型的な症状として,褐色~黒色の隆起性結節がみられ,表面は疣贅状で硬い。ダーモスコピーでは,milia-like cysts,comedo-like openingsが観察される。これらにより,脂漏性角化症は悪性黒色腫,基底細胞癌などの皮膚悪性腫瘍と区別される。皮膚病理組織学的に,基底細胞に似た小型な細胞の増殖が特徴であり,診断の確定には皮膚病理組織学的検査が推奨される場合がある。

    ▶私の治療指針・処方の組み立て方

    治療方針は患者の希望と症状の程度に基づく。通常,自覚症状がなく良性のため治療は必須ではないが,外観上の問題や物理的な不快感がある場合には治療を考慮する。治療法として以下のものがある。

    ①凍結療法:液体窒素を使用して病変を凍結し,数週間で自然に脱落させる。手軽で,小さな病変に適している。

    ②炭酸ガスレーザー:レーザーを用いて病変を蒸散させる。美容的な理由,病変の数が多い,あるいは精密な治療が必要な場合に適応となる。

    ③外科的切除:局所麻酔下で病変を切除し,必要に応じて縫合する。大きな病変や悪性が疑われる場合に適応となり,切除後に皮膚病理組織学的検査を行う。治療後は術後の感染防止や再発の予防が必要となる。

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