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特集:周術期の血糖管理

No.5072 (2021年07月10日発行) P.18

田村貴彦 (高知大学医学部麻酔科学・集中治療医学講座講師)

登録日: 2021-07-09

最終更新日: 2021-07-07

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田村貴彦
高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座 講師。2009年高知大学医学部卒業。ICU患者の急性期栄養療法の研究を行い,医学博士を取得。18年より約2年間,米国ハーバード大学にて基礎研究に従事し,2020年より現職。

1 術前血糖管理
・術前の血糖コントロールとしては,空腹時血糖値が130mg/dL未満,食後2時間血糖値が180mg/dL未満,HbA1cが8.0%未満となっていることが望ましいと考えられる。
・糖尿病患者では,良好な血糖コントロールを施行すれば,長期予後の改善が期待できる。しかし,血糖コントロールが不良な糖尿病患者に関しては,厳格な血糖コントロールは逆に患者予後を悪化させる可能性があり,多くのガイドラインが示すように180mg/dLを目安にコントロールすることが望ましい。
・術前経口炭水化物負荷は糖尿病患者の周術期の血糖コントロールを容易にし,インスリン抵抗性を改善する可能性がある。
・糖尿病薬の術前管理に関しては,術前日まではほとんどの糖尿病薬は継続され,術当日はほぼすべての糖尿病薬は中止されることが多い。しかし,比較的新しい糖尿病薬であるSGLT2阻害薬は手術2日前からの休薬が推奨されている。さらにその合併症として正常血糖ケトアシドーシスも認識しておく必要がある。

2 術中血糖管理
・周術期における異化亢進・高血糖は,感染症をはじめとする術後合併症を引き起こす。患者予後を改善するために,手術中の高血糖や異化亢進を避ける血糖管理が必要である。さらに,手術中の異化亢進には,①侵襲性異化亢進と②飢餓性異化亢進があり,それぞれをわけて考える必要がある。
・手術中の高血糖は合併症を引き起こすため,高血糖を避ける術中血糖管理の有効性は示されているが,術中強化インスリン療法の是非に関しては結論が出ていない。
・飢餓性異化亢進を防ぐために,手術中の少量ブドウ糖含有輸液投与の有効性が示されているが,具体的な投与量,投与方法に関してはまだ確立されていない。

3 術後血糖管理
・術後患者を含めた急性期における血糖管理法に関しての多くの研究がなされており,特に急性期血糖管理の目標値に関する研究は,無作為化比較試験が多くなされてきた分野のひとつである。約20年間の急性期血糖管理にまつわる研究の積み重ねの結果,術後血糖の目標値は「180mg/dLかつ低血糖を回避」とされることが一般的となってきている。さらに近年のネットワークメタ解析によると,術後患者の目標血糖値は,140(144)~180mg/dLとするのが望ましいとされている。
・糖尿病患者の術後血糖管理に関して,非糖尿病患者よりも高めの血糖値を目標に血糖管理を行うことで患者予後を改善するという確固たるエビデンスはなく,現在のところ,糖尿病合併患者の術後血糖管理は,非糖尿病患者の急性管理と同様で良いと考えられる。

4 人工膵臓による血糖管理
・人工膵臓による血糖管理は,従来のsliding scaleと比較して,頻回の採血やインスリンの皮下注射や持続投与の速度変更が不要になり,医療スタッフの労働負担の軽減にも貢献できる方法であり,インスリンに伴う医療事故の軽減にも寄与する可能性がある。
・心臓,肝臓,食道,膵臓を対象とした手術,肝移植手術の周術期に人工膵臓を用いて周術期管理を行い,低血糖発作を起こすことなく安定した血糖管理が施行できている。また術後の炎症反応も低下させたとの報告もある。今後,血糖推移のみならず術後患者のアウトカムにも影響を与えるのかという検討も期待されている。
・現在,人工膵臓による最適な血糖管理をめざした臨床ならびに基礎研究が積み重ねられ,その有用性が明らかになってきている。

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