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特集:子どもの睡眠「眠い」「眠れない」「眠らない」─呼吸,動き,行動にも要注意

No.5070 (2021年06月26日発行) P.22

神山 潤 (東京ベイ・浦安市川医療センター管理者)

登録日: 2021-06-25

最終更新日: 2021-06-24

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神山 潤
1981年東京医科歯科大学医学部卒,2000年同大学大学院助教授,04年東京北社会保険病院(現,東京北医療センター)副院長を経て,09年4月から現職。日本睡眠学会理事。主な著書『睡眠の生理と臨床』(診断と治療社)等。

はじめに

医療に関する電話相談での実例:「地方の高校1年生。昼夜逆転している。近医に相談したところ,『気合で治せ』と言われた。専門医を紹介してほしい」
確かに朝起きるには気合(モチベーション)も必要だ。しかし現状,既にモチベーションが低下し,症状が出現しているわけで,様々な支援を患者は求めている。プライマリ・ケア最前線の先生方に昼夜逆転を「気合で治せ」とおっしゃって頂かないですむような内容を,と考え本稿を上梓した。お役に立つことを祈念している。

▶気にしなくて大丈夫なことが多い睡眠中の呼吸,動き
寝言,歯ぎしり,律動性運動障害,レム睡眠期の無呼吸,手足顔面のピクツキ

気にすべき睡眠中の呼吸,発作(動き)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群,「発作」回数の漸増(てんかん代謝異常症等)

*アンモニア高値を契機にオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の診断例あり

▶プライマリ・ケアの現場で特異的な治療が可能なsleep disorders
睡眠時驚愕症,睡眠時遊行症の高頻度例:ベンゾジアゼピン受容体作動薬
レストレスレッグス症候群(RLS):鉄剤
夜尿症(詳細は他稿を要参照)

専門医へ紹介すべきsleep disorder
閉塞性睡眠時無呼吸症候群:耳鼻科へ紹介。アデノイド切除・扁桃摘出術を要考慮
ナルコレプシー:専門医へ診断と治療を依頼

本稿では睡眠不足症候群,不適切な睡眠衛生による不眠を中心に解説


● 対応のポイント ●
1. 睡眠日誌を見ながら意見交換
2. 自律神経を含む適切な睡眠衛生(スリープヘルス)の知識や,睡眠負債回復過程の研究結果を紹介
3. 会話することでモチベーションを上げることに注力
4. 漢方薬,メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン),オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント,レンボレキサント)を処方する場合もある
5. 起床困難持続例にアリピプラゾールを処方する場合もある
6. 不登校の場合,本質的な原因(人間関係,いじめ等)への対応が重要

お伝えしたいこと…
診察の帰り際に「無理して学校に行かなくていいんじゃない?」と伝えたところ,症状が軽快した方もいる。各自,症状出現に至るプロセスは様々だ。可能な限り,無理のない範囲で経過を伺い,睡眠日誌を活用してオーダーメイドの対応をしたい。コロナ禍での医療の変貌(急性感染症患者激減)を受け,従来とは異なった,時間をかけた個別対応を行うことで,新たな(乳幼児,思春期)医療の魅力を知って頂きたい。

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