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顎関節症における疼痛の病態と治療について

No.5270 (2025年04月26日発行) P.48

名越泰秀 (京都第一赤十字病院精神科(心療内科)部長)

宮地英雄 (こころのホスピタル町田院長)

登録日: 2025-04-28

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  • 顎関節症の病態や治療について,中枢性感作によって生じているもの,心理社会的要因が関与しているものも含めてご教示下さい。こころのホスピタル町田・宮地英雄先生にご解説をお願いします。

    【質問者】
    名越泰秀 京都第一赤十字病院精神科(心療内科)部長


    【回答】

    【顎関節部の侵害と中枢性感作,心理社会的要因の痛みなどが単独に,あるいは混在する場合がある】

    「顎関節症」とは,両側の耳の前にある顎関節に不具合が生じて発する症状に対し,汎用性に利用される名称です。「症」という病名を示唆する語のため誤解されやすいですが,1つの病態を指す用語ではありません。①関節部疼痛,②開口障害(ひっかかりや「ロックする」のように表現される),③関節部雑音(関節の動きに連動する)が三徴ですが,この症状を起点にして1つ~複数の病態を,まとめて1つの名称としているのでややこしいです。

    疾患の原因部位として,顎関節部の解剖学的に外側から順に,筋(主に咬筋),関節包,関節円盤,骨が関与しえます。すなわち筋痛や筋炎,関節炎,関節円盤のずれ,脱臼,骨炎といった診断がなされればよいはずですが,歯科領域では,先に「顎関節症」という名称をつけ,その原因鑑別をしていくという診断手順を踏んでいるようです。

    さらに「顎関節」の構造とそれに伴う運動〔1つの骨(下顎骨)の両端が,異なる特殊な動きをする関節(顎関節)でつながって,その関節のもう一方は同じ骨(頭蓋骨)にある,という複雑な構造からくる運動〕の特殊性は,さらに症状を複雑なものにします。顎関節症の症状自体が,この特殊な構造や運動と関連し,心理社会的問題に合わせて増減することがあり,これが,「いわゆる心身症」メカニズムとして扱われることが多いです。この精神心理的側面に,精神医療の関わりが求められます。

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