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糖尿病(インスリン自己注射を含む)[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.29

谷本早千枝 (医療法人社団生康会)

谷本光生 (谷本医院院長/順天堂大学非常勤講師)

登録日: 2021-05-06

最終更新日: 2021-04-28

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  • 在宅医療においても基本的な糖尿病管理は一般診療と同様である。ただし,インスリン導入を検討する場合には,合併症の状態や導入に伴うリスクだけでなく,患者の生活環境や周囲の介護力をふまえた慎重な検討が望まれる。
    本稿では,在宅医療におけるインスリン導入について概説する。一般診療における糖尿病管理に関する詳細は「内分泌・代謝疾患:糖尿病・糖代謝異常」の稿やガイドライン,成書などを参照されたい。

    ▶状態の把握・アセスメント

    【注意点】

    在宅医療現場では,たとえ薬を分包したとしても,1週間分まとめて内服してしまう例が存在することも考慮し,安易にインスリンを導入することのないよう慎重に適応を判断する。

    【フィジカル】
    〈インスリン療法の絶対的適応〉

    ①インスリン依存状態
    ②高血糖性の昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス,高浸透圧高血糖状態)
    ③重症の肝障害,腎障害を合併しているとき
    ④重症感染症,外傷,中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)のとき
    ⑤糖尿病合併妊婦(妊娠糖尿病で,食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)
    ⑥静脈栄養時の血糖コントロール

    〈インスリン療法の相対的適応〉

    ①インスリン非依存状態の例でも著明な高血糖(たとえば空腹時血糖値250mg/dL以上,随時血糖値350mg/dL以上)を認める場合
    ②経口薬療法のみでは良好な血糖コントロールが得られない場合
    ③やせ型で栄養状態が低下している場合
    ④ステロイド治療時に高血糖を認める場合
    ⑤糖毒性を積極的に解除する場合

    【メンタル】

    インスリン療法の相対的適応であっても,糖尿病治療として受け入れていない場合や,認知機能の低下や視力障害,心理的状態(抑うつ,不安など)により注射手技の習得が困難で,それをサポートすることができる生活環境にない場合には,なるべく導入を避けるべきである。

    【介護力】

    在宅患者では,低血糖症状などを患者自身が訴えられない状態であることも多く,本人や家族などが血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)可能であることが望ましい。
    老老介護や認認介護などで家族が異変に気づけないこともあるため,特に高齢患者の場合には家族の認知機能や精神状態の評価も必要である。

    残り2,065文字あります

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