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【識者の眼】「COVID-19パンデミックによる抗菌薬使用量の変化」具 芳明

No.5008 (2020年04月18日発行) P.63

具 芳明 (国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)

登録日: 2020-04-01

最終更新日: 2020-04-01

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴い、首都圏を中心にさまざまな活動の自粛が求められている(本稿は3月下旬に執筆)。COVID-19対策はもちろん重要であるが、薬剤耐性(AMR)対策はさらに長いスパンで考えていく必要がある。抗菌薬使用の増加はAMRの増加に直結する。パンデミックに伴う抗菌薬使用量の変化が後々のAMR対策の負荷に影響する可能性があり、決して無関係ではない。

パンデミックによる抗菌薬使用量の変化は、増加要因と減少要因が考えられる。まず、COVID-19が重症化した場合、急激に状態が悪化するため細菌感染症の鑑別を行いつつ抗菌薬が投与される可能性がある。したがって、重症患者の増加は抗菌薬使用の増加要因となる。また、国内での流行規模が拡大し軽症患者が多く受診することになると、「診断的治療」として抗菌薬を処方される機会が増えるかもしれない。それは本来避けるべきものではあるが、感冒をはじめとする急性気道感染症に対する抗菌薬処方がまだまだ多い現状や、他の疾患を診断するための迅速検査が感染対策の観点から行いにくいことを考えると、そのような抗菌薬処方の増加が懸念される。

一方、風邪症状での受診を控える呼びかけや、定期受診の間隔を空けるなどの動きがあり、そのため全体に外来受診患者数が減っている。受診数の減少は抗菌薬処方の減少要因となる。薬局サーベイランスによる抗菌薬処方件数をみると、2月〜3月下旬までは前年比で減少傾向となっており(http://prescription.orca.med.or.jp/syndromic/kanjyasuikei/)、現状の受診状況が続けば抗菌薬使用量が減少するものと予想される。また、今後COVID-19の迅速診断が実用化されれば、念のための抗菌薬使用が減ることが期待される。

本稿執筆時点ではCOVID-19の拡大を抑えようと懸命に取り組まれているところであり、先の状況は読めない。パンデミック対応が最優先の状況ではあるが、その状況によって抗菌薬の使用状況が大きく変化しうる。後々のAMR対策につなげるためにも状況を注視していきたい。

具 芳明(国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)[AMR対策]新型コロナウイルス感染症]

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