2019年10月に消費税10%増税に伴う診療報酬改定が行われた際、精神科は、消費税8%引上げ時に厚生労働省が計算間違いをして多く補てんしたという理由で削られた経緯があり、2020年度の診療報酬改定がどうなるか興味をもって答申を待った。
精神科の診療報酬の特徴は、診療所は通院精神療法、病院は入院基本料が、収入のほとんどである点である。外科では手術などの手技料に大きな評価があるが、精神科における手技料である精神科専門療法は入院報酬全体の5%前後と少ない。精神科専門療法の個々の点数が低いこともあるが、同日算定禁止のルールがあり精神科専門療法を1日に何回行っても、その中の1つしか算定できない決まりである。厚労省は、精神科を主管する社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課では、入院中心主義から地域生活中心への改革を進めるため、地域生活支援、精神科版地域包括ケアなどと旗を振っているが、診療報酬を担当する保険局医療課では入院中心時代の行政手法を巧妙に残し、精神科医療費を抑えているのである。
一方、最近の医療政策にはエビデンスとして、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や診療群分類包括評価(DPC)などが用いられ、昨今の各科診療科別医師の必要数の推計などにも利用されている。しかし、NDBには社保や国保はデータがあるが生保のデータはまだなく、生保の多い精神科はデータとしては使えない。一方、DPCは医療の投入量を定額点数の包括評価と出来高払いの点数で評価する仕組みであるが、精神科は医療投入量が診療報酬と連動せず、医療費総額yと入院日数xとの間には、y=ax+dという中学校なみの連立方程式の関係しかないため、DPCにもならないのである。
まずは、精神科専門療法の個別の評価を上げること、そして、これを同日算定できるようにすることが抜本的な解決のための道筋であると思う。一般科の3分の1程度しかない精神科の入院費を一般科並みにしたいのである。
平川淳一(平川病院院長、東京精神科病院協会会長)[診療報酬]