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神経障害性疼痛 × 抑肝散[漢方スッキリ方程式(31)]

No.4981 (2019年10月12日発行) P.14

宮西圭太 (みやにし整形外科リウマチ科院長)

登録日: 2019-10-10

最終更新日: 2019-10-10

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抑肝散は蒼朮,茯苓,当帰,釣藤鈎,川芎,柴胡,甘草の7つの生薬から構成される。江戸時代の漢方家である和田東郭は「蕉窓方意解」のなかで抑肝散について「多怒,不眠,性急の症など甚だしきを主症とする」と述べ,不眠があり何かに怒りを感じている症例への適用を論じた。現代でも抑肝散はそのような古典的な適応に沿って,小児から成人まで精神的もしくは情動的に不安定な背景を有する症例に頻用されている。

近年の基礎研究ではマウスの神経障害性疼痛モデルにおいて,抑肝散が脊髄でのIL-6の発現抑制を介してアロディニアを改善することが報告されている1)。ラットの絞扼性神経損傷モデルにおいても抑肝散による抗アロディニア効果が報告されている2)

殿部痛が1週間以内に著明に緩和

本症例は問診上は古典に示されたような強い怒りの存在が確認できず,また精神的に不安定な状態でもなかった。神経障害性疼痛という西洋医学的病態に則して抑肝散を使用したところ,1カ月以上持続した殿部痛が1週間以内に著明に緩和した。

今回は坐骨神経痛の症例を示したが,抑肝散が応用できる可能性がある整形外科領域の神経障害性疼痛としては腰椎・頸椎椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症,頸椎症性神経根症,手根管症候群などが挙げられる。複合性局所疼痛症候群も神経障害性疼痛の一つとされており,一般的に難治例が多いが試してみたい疾患である。これらへの当院での使用経験はまだ少なくすべてに有効とは言い難いが,今後症例の集積を待ちたい。

漢方は原則として食前内服であるが,成人・小児を問わず食後のほうが不快感なく飲んでくれることもあり,当院では「食前が難しければ,食後に飲んでも構いません」と説明を加えている。痛みの評価については通常1~2週間の内服で有効性を判定している。

実臨床では1日でも早く患者さんの痛みを取り除くことが重要である。神経障害性疼痛を有する症例では,漢方的に冷えや瘀血,腎虚が併存する症例が少なくない。抑肝散に加え,併存する冷えや瘀血,腎虚に対応する漢方薬(表)を併用することで有効性の向上につながるものと考えている。本症例も赤黒い皮膚色調や臍傍圧痛を認めたことから瘀血が併存し,抑肝散で効果が乏しければ駆瘀血剤の併用を考慮していた。

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