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本態性高血圧症[私の治療]

No.4980 (2019年10月05日発行) P.44

苅尾七臣 (自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授)

登録日: 2019-10-08

最終更新日: 2019-10-01

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  • 高血圧は,脳卒中,心筋梗塞,心不全,大動脈解離など急性循環器疾患の最大のリスク因子のひとつであり,慢性腎臓病や認知症のリスクにもなる。循環器疾患のリスクは,115mmHgを最低にして,収縮期血圧が20mmHg上昇するごとに2倍ずつ増加する。降圧治療により,診察室血圧を10mmHg低下させることにより,脳卒中と心不全のリスクが約25%低下,冠動脈疾患と死亡リスクが約15%低下する。わが国の高血圧患者は4300万人と推定される。

    ▶診断のポイント

    【方針】

    高血圧患者は,①血圧レベル,②合併症と臓器障害・リスク因子,③二次性高血圧,の3つの視点より評価する。

    すべての高血圧患者には家庭血圧測定が推奨され,高血圧診断と降圧治療目標は,診察室血圧よりも家庭血圧を重要視する。著しい血圧変動(診察室血圧や家庭血圧)や治療抵抗性高血圧,臓器障害,循環器疾患の既往等を有するハイリスク群では,24時間自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring:ABPM)を行うことが望ましい。睡眠時無呼吸症候群,糖尿病,慢性腎臓病,心不全を合併する患者や,降圧療法中にもかかわらず心肥大や血管スティフネスの改善がない患者では,夜間血圧を評価するのが望ましい。二次性高血圧は約10%存在し,特にコントロール不良高血圧では,睡眠時無呼吸症候群,腎臓病,腎血管性高血圧,原発性アルドステロン症,甘草成分を含む漢方薬を除外する。

    【診断】

    診察室血圧140/90mmHg以上を高血圧と診断する。早朝高血圧は,診察室血圧レベルにかかわらず,早朝家庭血圧(起床後1時間以内に2回測定した早朝血圧の5日間平均)が135/85mmHg以上の状態である。

    家庭血圧135/85mmHg以上,ABPMで24時間血圧が130/80mmHg以上,昼間血圧135/85mmHg以上,または夜間血圧120/70mmHg以上(夜間高血圧)の状態が,診察室外血圧の高血圧である。この状態で診察室血圧が140/90mmHg未満の場合は,仮面高血圧と定義する。

    白衣高血圧は,診察室血圧が高血圧(診察室血圧が140/90 mmHg以上)であっても,診察室外血圧がすべて基準閾値未満(家庭血圧や昼間ABPM血圧が135/85mmHg未満,24時間ABPM血圧が130/80mmHg未満,かつ夜間ABPM血圧が120/70mmHg未満)を示す状態である。

    【家庭血圧測定方法】

    朝(起床後1時間以内,朝食前,朝の薬剤服用前)と晩(就寝前)の1日2機会,1~2分間の安静坐位後,2回ずつ1分の間隔をあけて家庭血圧を自己測定する。 朝・晩の家庭血圧値を5日間以上,別々に平均し,早朝家庭血圧と就寝時(晩)家庭血圧を算出し,高血圧の診断・治療の指針とする。 

    【合併症と臓器障害・リスク因子の評価】

    高血圧のリスクは併せ持つ他のリスクにより大きく異なる。基本的にハイリスクであるほど,より徹底した降圧が有効であることから,リスクの層別化はきわめて重要である。

    血管疾患の合併や血管スティフネスが増大している患者では,高血圧や血圧変動増大のイベント発生リスクや臓器障害の進展リスクが相乗的に増幅される。

    病歴では,脳虚血発作,狭心症症状や心不全症状,間欠性跛行など,多血管病を示唆する臨床症状を見逃さない。喫煙歴,運動歴,睡眠状態,健診結果などの情報も聴取する。

    身体所見では,血圧左右差と血管雑音で血管狭窄病変を,心臓聴診で大動脈弁狭窄症,僧帽弁逆流症と心不全を見逃さない。 

    初診時検査では,心電図と採血・尿検査を行い,糖尿病,脂質異常など他のリスク因子,左室肥大,慢性腎臓病(推定糸球体濾過量<60,蛋白尿±以上)を評価する。

    無症候性血管障害は,足首/上腕血圧比(ankle-brachial-index:ABI)で末梢動脈疾患(ABI<0.9)を診断し,脈波伝播速度・CAVI(cardio ankle vascular index)で血管スティフネスを評価する。

    【薬物療法の開始と目標血圧】

    診察室血圧は,基本的に140/90mmHg以上で降圧薬を開始し,130/80mmHg未満を目標とする。

    早朝家庭血圧は,基本的に135/85mmHg以上で降圧薬を開始し,125/75mmHg未満を目標とする。

    例外は,75歳以上の高齢者(忍容性があれば130/80mmHg未満),両側の頸動脈狭窄や主幹脳動脈閉塞を合併した脳梗塞,アルブミン尿のない慢性腎臓病患者で,診察室血圧140/90 mmHg未満,家庭血圧135/85mmHg未満を目標とする。

    診察室血圧が130~139/80~89mmHgは「高値血圧」と定義し,異常高値と考えて生活習慣の是正(食事療法,運動療法,良質な睡眠)を開始する。

    糖尿病,アルブミン尿を伴う慢性腎臓病,循環器疾患を合併する「高値血圧」患者においても,診察室血圧130/80mmHg未満,家庭血圧125/75mmHg未満への降圧がみられない場合には薬物治療を加える。

    白衣高血圧は,他の心血管リスクがなければ,将来の早朝高血圧と糖代謝異常の発生に注意し,生活習慣の是正を行う。

    【薬剤選択の原則】

    高齢者高血圧で血圧変動が大きい場合はカルシウム拮抗薬(calcium channel blocker:CCB)を選択する。蛋白尿/アルブミン尿を有する患者の場合はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor blocker:ARB)を選択する。

    心筋梗塞・心不全など心疾患を伴う患者では,ARBよりも,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting-enzyme:ACE)阻害薬を優先し,β遮断薬を併用する。

    抗血栓療法(抗血小板治療や抗凝固療法)を行っている患者の降圧目標は,診察室血圧130/80mmHg未満,家庭血圧125/75mmHg未満への降圧を行う。1剤でコントロール不良の際は,速やかにARB/CCB合剤を用いる。ARB/CCB合剤で降圧できない際には,利尿薬(サイアザイド類似薬,ミネラルコルチコイド拮抗薬)を加える。

    ARB/CCB/利尿薬でも血圧コントロールができない場合には,治療抵抗性高血圧と診断し,高血圧専門医へコンサルトし,二次性高血圧を除外する。二次性高血圧が除外された治療抵抗性高血圧の血圧コントロールにはCCB増量,またはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が特効薬である。

    高血圧を合併する糖尿病患者では,sodium-glucose co-transporter(SGLT)2阻害薬で早朝血圧が低下する。

    β遮断薬の禁忌は気管支喘息と高度徐脈である。ACE阻害薬とARBの禁忌は妊娠の可能性がある女性である。

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