洞性P波を欠く3秒以上のR-R間隔延長(ポーズ)
今回お届けするテーマは,「洞停止」で,英語表現は,sinus arrestです。別の“sinus pause”(洞静止)という表現については,後で少し述べます。
所見自体は,比較的シンプルです。ただ,“深掘り”をめざして,周辺事項も交えて丁寧に解説します。前編では,心臓内で起きている現象をイメージしながら,基本的な心電図の読み方についてお話ししようと思います。では,スタート!
「洞停止」は文字通り,サイナス,つまり,洞結節(sinus/sinoatrial node)が“卒倒・気絶する”という意味です。本来なら定期的に“自家発電”してほしい心臓のリーダーが,なぜか突然“休業”してしまった状態です。
以下,連動するすべての組織の興奮が起きませんから,“チーン”と何秒間か心臓が止まってしまいます。この原因は,基本は洞結節にあると考えられ,洞結節機能不全(sinus node dysfunction:SND)の1つと扱われます。ちなみに,「洞不全症候群」(SSS)という呼称でも悪くはありません。
しかしながら,後者は原則として何らかの症候(自覚症状)を前提としており,無症状の場合に使用が躊躇されます。その点,心電図だけの“暫定診断”としては,より広く包括する“SND”のほうが無難なのかもしれません。「洞停止」の心電図所見の肝は,(本来“出るべき”タイミングにもかかわらず)洞性P波が出現せずに3秒間以上のR-R間隔延長(ポーズ)を生じてしまうことです。まずはこれをおさえましょう。