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緒方洪庵(6)[連載小説「群星光芒」214]

No.4802 (2016年05月07日発行) P.70

篠田達明

登録日: 2016-11-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 緒方洪庵一家は「ようけお子が居てはりますなあ」と感心されるほど子沢山だった。

    結婚して2年目に長女の多賀が生まれ、翌年には長男の整之輔が誕生した。だが長女は6歳、長男は2歳で夭逝した。

    続く次女と3女も幼没する不運に見舞われたが、2男平三、3男四郎、4女七重、5女八千代、6女九重、4男子郎、7女十重、5男収二郎、そして13番目の6男重三郎と、9人は無事に育った。

    年子は競争心が強く喧嘩ばかりするものだが、12歳の平三と11歳の四郎は仲がよく、なにをするにも一緒だった。

    2人をどこか他所に預けて修業させようと考えていた洪庵は、折よく門人の渡辺卯三郎が郷里の大聖寺藩(石川県加賀市)で医塾を開くことになったので、兄弟を渡辺に託すことにした。

    大聖寺藩10万石は加賀百万石の支藩で白山5院のひとつ大聖寺を中心に興った城下町である。渡辺の話によると海辺に近い質朴の土地柄であり、気風も穏やかで学ぶにはもってこいの静かな町だという。

    洪庵は兄弟を書斎に呼んで申し渡した。

    「蘭学を修業するには漢学の素養が必須である。その漢学もわしの経験からいえば二十歳までに修めるのが有効である。お前たちもこのたび帰郷する渡辺卯三郎に従って大聖寺へ往き、数年間、漢学をみっちり学んでこい。冬は雪が深いが、秋は五彩の紅葉が見事な景色のよい所である。お前たちは渡辺を師と仰ぎ、腰を落ち着けて心身を鍛えるのだ」

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