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希望と絶望(その2)─絶望編[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(259)]

No.4967 (2019年07月06日発行) P.62

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-07-03

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基礎系の教授が半コマずつで研究を紹介する、医学科1年生を対象とした「基礎医学入門」という科目がある。今年は講義室に入ったとたん目を疑った。

キャパ250名ほどの階段教室なのだが、後方からほぼ最密充填で、前方3分の2くらいは誰ひとり座っていない。担当教員に聞くと、毎回こうなんです、とのこと。

したくはないが、いきなり説教である。君ら、おかしいとは思わないのか。講義をする人に対して失礼だとは思わないのか。

例年、後方に座る子が多いとはいえ、前の方に座る子もいる。100名中20名ほどの女子学生がびっしり右翼席でかたまっているというのもいかがなものか。とんでもない同調圧力がかかっているとしか思えない。

昨年までの経験では、この講義、けっこう興味深く聞いてくれるという印象があった。なので、大学にはいってからの教育が悪くて、病理学を教える3回生になるころにはどんよりしてくるのだと思っていた。しかし、新入生からこれとは、絶句である。

毎年ぼやいているが、今年の3回生は例年になくひどかった。病理学を教え始めて16年、右肩下がりの印象があったが、今年は底が抜けたような感じだった。

講義の進め方や試験のやり方を説明するので、第1回目の講義は全員出席するように伝えてある。例年90%前後の出席だったが、今年は70%程度。どうしてこの程度のことができないのか。

もちろん優秀な学生もいるが、既習科目のことをまったく理解できていない学生が多い。アンケートでは、2回生で習ったことが3回生で必要になるとは思いませんでした、というのが多数あった。どういう意味なんや。まったく訳がわからない。

この子たちは昔からこんなだったのか。まさかそんなことはあるまい。受験勉強を始めるまでは、もっと好奇心があったのではないのか。前回書いた「めばえ適塾」に来ていた子どもらのように。

試験の成績はいわずもがな。大まけにまけて、110名中64名が不合格。面接をして話を聞くと、多くが、勉強法を間違えましたと。はぁ?前年度の試験問題を配布し、同じ形式と伝えてあるではないか。

いかんとは思いながらも、教育意欲は大幅低下。定年まであと2年、こんな状況が続くようなら、どうしたらいいのだろう。

なかののつぶやき
「不真面目な学生が多いために教育意欲をなくす、というのは、真面目な学生に対して申し訳ないことです。しかし、こっちも人の子、ある程度はどうしようもありませんわ。学年全体で雰囲気をなんとかできないのか、と指導するのですが、なんとなく、真面目な子と不真面目な子の間には断層があるようで、これもどうしようもないみたいです」

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