鍼治療の効果と魅力を実感した、忘れられない症例である。
10歳代後半の男性。鍼灸大学に在籍し、大病の経験はない。大学入学を機に始めたバドミントンの影響か、腰痛を発症した。腰のMRI検査を受けたものの、明確な原因は見つからず、外用薬や牽引療法などを試したが、痛みの改善はほとんど見られなかった。
痛みが続く中、彼はある勉強会に参加していた。その日も座学の後、しばらくの間立ち上がるのがつらいほどの腰痛に悩まされていた。休み時間に鍼治療を受ける機会があり、手掌の側面、小指の付け根にある“後渓”という経穴(つぼ)に1本の鍼が刺入された (写真)。“得気”と呼ばれる鍼治療特有の独特な感覚を、彼ははっきりと感じた。治療後に立ち上がると、まるで腰に翼が生えたかのように痛みが消えていた。この治療で、それまで苦しんでいた腰痛から解放され、残りの学生生活も痛みを気にせず楽しむことができた。
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