鳥取大学皮膚科での国内留学中、電子顕微鏡を自由に見ていいと言われ、私は喜び勇んでアトピー性皮膚炎患者の検体を電子顕微鏡室に持ち込み、夢中になって観察した。すると、突起を縦横無尽に伸ばし、細胞質に大小の顆粒を充満させた巨大な細胞に出くわした。咄嗟に頭をよぎる「祟り神……」。急いで写真を撮り(図)教授の元へ向かう。教授は一瞥の後「肥満細胞」とだけつぶやいた。光学顕微鏡のHE染色像では想像もつかない姿で目前に現れた、この毒々モンスターの電子顕微鏡像は、今でも脳裏に焼き付いて離れない。
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