日本プライマリ・ケア学会会長 小松 真
一言シリーズ第二弾『在宅でのこの一言!』を、私の診療所の待合室に置いておいたところ、「先生往診して下さるのですか」「私が動けなくなったら診に来て下さいますか」「最近往診して下さる先生が少ないので‥‥」などと言われ、「その時になったら、いつでも往きますよ」と答えているが、改めてこの本が多くの人に読まれていることを実感し、熱い思いが込み上げてきます。
このたび、日本プライマリ・ケア学会では、一言シリーズ第三弾として、『患者さんのこの一言!』を刊行することになりました。私たち医療に携わる者は、患者さんだけではなく、その家族を含め、地域に住む多くの方々と、日々多くの言葉を交わしています。
日常の診療では、挨拶から問診、診療、訴えへの対応など、お互いにさりげなく交わしている言葉はあまりにも多く、お互いの心に深く残る言葉はそれほど多くはありませんが、一つ一つの言葉の中には気づかない落とし穴があるもので、医療者にとっては常に細心の注意を払わねばならないことがあります。また感謝の言葉を頂くのは嬉しいことですが、痛み、苦しさ、心の悩みを言葉として表現できない患者さんもあり、表情や体の動きで訴えを察知することも大切です。とはいえ、患者さんからの一言は医療者にとって、医療の質を高める心の宝であり、大切にしたいものです。
今回の『患者さんのこの一言!』は前二回と同じように、会員の中から経験豊かな医師を中心に、若手の医師や一部公募の形をとって、それぞれの「一言」を寄せて頂きました。内容は様々ですが、「元気の出た一言」「喜びの一言」など医療者にとって嬉しいもの、また「苦い一言」「ハッとした一言」「自分を変えた一言」など、一人一人がその思いを切々と語っており、熟練の医師にとってはさらなる医療の発展のために、若い医師たちは先輩の豊かな経験を参考に、そして多くの国民からはもっともっと声を掛けて頂きたく、このシリーズを通してお読み下さるよう願っているところです。
この一言シリーズの延長線として医師以外の医療関係者からの一言、さらに国民から直接医療者への一言などを頂ければ、わが国の医療の質はより高まるものと考えています。
最後に本書の出版に当たり一言を寄せて頂いた会員の皆様と、多大なご努力、ご支援を頂きました日本医事新報社に、深く感謝の意を表します。
平成一八年一二月