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町医者から見た小多機と看多機[長尾和宏の町医者で行こう!!(98)]

No.4964 (2019年06月15日発行) P.58

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2019-06-12

最終更新日: 2019-06-11

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小多機の基礎知識

住み慣れた地域で最期まで暮らしたいと願っても、諸事情で叶わない時がある。そんな時のために自宅か施設かの二者択一ではなく、自宅と行ったり来たりできるサービス形態も用意されている。

国が強力に推進してきた小規模多機能型居宅介護(小多機)は、同一の介護事業者が「通所(デイサービス)」を中心に、「訪問(ホームヘルプ)」や「泊まり(ショートステイ)」を一体的に提供するものだ。2006年4月の介護保険法改正時に地域密着型サービスの1つとして誕生した。それまでは「住み慣れた地域で介護サービスを受け暮らしていきたい」という方が多い中、重度になると遠くの施設に入所するのが一般的だった。そんな状況を打破すべく生まれたのが小多機の前身である「宅老所」である。宅老所は地域密着型の小規模施設であるだけでなく通所を中心に訪問・泊まりを組み合わせたサービスを行う事業所(小規模多機能ホーム)もある。正式に制度化されたものが「小多機」である。

従来の介護サービスは、利用者や家族の状況に合わせて「通所」「訪問」「泊まり」を選択しそれぞれ必要なサービスを契約するという形であった。しかし利用者を取り巻く状況は日々変化する。その都度利用するサービスを変更すれば「介護事業所を新たに探す必要がある」「信頼関係の築けたスタッフや利用者と離れることへの不安」など、利用者やその家族に大きな負担が生じる。それらを解消し、サービス選択の自由度を高めた点が小多機の特徴である。ここでの利用料は月額定額制だ。通所・訪問・泊まりを組み合わせる場合も定額(宿泊費・食費などは別途必要)で利用できるため、毎月の介護保険利用限度額を超えないかという心配は不要だ。サービスの利用回数は1日あたりの定員人数を超えなければ特に制限がない。小多機を営む事業所は24時間・365日体制のため休業日がない。そのため定員さえ問題なければ「家族が体調を崩したためデイサービスを利用した後そのままショートステイに」といった突発的な利用も可能にしている。

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