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【書評】在宅酸素療法をイチから学ぶ本-基礎から適応病態別の処方まで

No.4948 (2019年02月23日発行) P.68

平井豊博 (京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授)

登録日: 2019-02-19

最終更新日: 2019-02-19

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慢性呼吸器疾患をはじめとして、内科的治療を十分に行っても持続する低酸素血症(慢性呼吸不全)に対して、呼吸困難などの症状の緩和、生活の質(QOL)の向上、生命予後の改善を目的に在宅酸素療法(HOT)が導入されている。HOTは、呼吸器専門医だけでなく、一般の実地医家の方々にとっても実施する機会のある身近な治療法である上に、医師だけでなく看護師、理学療法士などのコメディカルや、酸素療法関連の業者も含めて、多職種が連携して行われる治療である。その意味で、診療に関わる関係者が皆、この治療の実際をよく理解しておくことが質の高い診療に必要になってくる。

本書は、長年この分野の第一線で多くの症例を診療してこられた著者の英知が凝縮された1冊である。呼吸不全の病態生理に始まり、HOTの適応と処方の実際、適応となる各疾患の解説、呼吸リハビリテーションなどの併用療法、HOTをより効果的に行うための知識、換気補助療法との併用、そして最後に、HOTに関するわが国の現状と今後に至るまで、HOTに関して実地臨床で必要とされる内容が網羅されており、豊富な表やイラスト、写真を交えながら、具体的にわかりやすく解説されている。

また、付録として臨床で利用できる各社の代表的な酸素濃縮装置について、特徴や性能、サイズなどが細かく比較された表も付いており、患者さんに合った装置の選択を検討する際にとても役立つものとなっている。より深く学びたい方には項目ごとに参考文献も提示されており、HOTに関わるすべての方に幅広く活用いただける内容である。若手医師への教育をはじめ啓発活動にも熱心に取り組んでこられた著者ならではの、学習者目線に立ってうまく配慮された構成となっている。

本書のタイトルどおり初めから順に学んでいってもよいし、診療の中でわからないことがあったとき、何か困ったときなどに事典として調べるのにも適した本であり、在宅酸素療法の際にいつも側に置いておきたい書である。本書を通して在宅酸素療法の理解が深まり、より良い診療に必ずや役立つと確信する。

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