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【書評】家庭医療学,老年医学,緩和医療学の3領域からアプローチする在宅医療バイブル〈第2版〉

No.4917 (2018年07月21日発行) P.70

新田國夫 (日本在宅ケアアライアンス議長)

登録日: 2018-07-17

最終更新日: 2018-11-28

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本書は在宅医療分野における気鋭の医師・川越正平氏が編著として出されたものである。2014年に初版が、2018年4月に改訂第2版が出された。在宅医療の学際性は家庭医療学、老年医学、緩和医療学、リハビリテーション医学等で成り立っているが、この中で「重要な領域としての家庭医療学、老年医学、緩和医療学の3領域を取り上げ、これらの領域の知見を統合する形で在宅医療のエッセンスの結集を企図した」ことは、在宅医療をさらなる地平に導くものである。本書は広範な学際性の中でも、患者中心であることがますます重要であるという高齢社会の医療のあり方を示したものだ。

内容は、できる限り平易な言葉で全編がまとめられており、個別疾患に関しては最新のガイドラインに基づいて明記しつつ、在宅医の果たすべき役割を明確に述べている。本書のnarrative based medicineの解説は、その意味を以下の通り定義している。「病の体験を患者と医師との関係の中で紡ぎ上げる物語としてとらえ、患者の持つ疾患の意味を理解し、一律でない患者一人一人に合わせたケアにつなげるという、患者の主観を重視した医療の在り方」。在宅医療に携わる医療機関は地域のあらゆる課題について対応する所でなければいけない。この書に盛り込まれている、いわゆるゴミ屋敷対策等のコラム、Q&Aは編者の意図がうかがえて面白い。

在宅医療診療ガイドラインについても述べられており、在宅でのサービスに関して、どこまでその有効性が明らかにされているのか、また明らかにされていないのかを浮き彫りにし、今後求められている臨床研究課題を明確にすることが大切との記載はその通りである。ただし、高齢者医療ガイドラインで述べられているように、従来のガイドラインは前期高齢者までが対象のことが多く、在宅医療診療ガイドラインも対象者の年齢が明確になっていない。在宅医療を受ける者のうち85歳以上が50%を超える中、今求められるのは75歳、80歳以上の質の高いエビデンスだ。今後はランダム化比較試験で得られたエビデンスにより、在宅医療診療ガイドラインが作られていくものと確信している。

最後に、「在宅医療という名称は診療の場を示しているにすぎず、生活に着目し人生に伴走する視点や理念を、すべての医療ケアに通底させることによって医療がより豊かになり、この理念があらゆる医療現場で活かされる」という編著者の指摘は、まったく同意見であり、この書を通じて日本の在宅医療の発展を願うものである。

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