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【書評】医療経済・政策学の探究

No.4910 (2018年06月02日発行) P.68

鈴木邦彦 (日本医師会常任理事)

登録日: 2018-05-29

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本書は著者が日本福祉大学在籍中の33年間(1985~2017年度)に行った医療経済・政策研究(単著23冊と単著に準ずる共著2冊)の総括かつエッセンスである(はしがきより)。

本著は、序論「私の医療経済・政策学研究の軌跡」と自選論文集である第Ⅰ部「テーマ別の主要実証研究」、および全著書のはしがき・あとがきと目次を収録した第Ⅱ部から構成されている。ちなみに「医療経済・政策学」とは、「政策的意味合いが明確な医療経済学的研究と、経済分析に裏打ちされた医療政策研究との統合・融合をめざし」て、新たに考えた造語・新語とのことである。

著者の歯に衣着せぬ論調は、現場への深い洞察から生まれており、最初の単著である『医療経済学』(1985)において、「在宅療養の“寝たきり老人”の生活費・家族介護費相当分も含んだ広義の医療・福祉費用(real cost)は、施設収容患者の費用とほとんど差がないこと」を日本で最初に示している。

『保健・医療・福祉複合体』(1998)は、著者が自らのライフワークと自己評価している実証研究書で、現場の実態を理論的に解明した名著である。

『TTPと医療の産業化』(2012)では、「医療の企業化」には営利産業の医療への参入だけでなく、一部の医師や病院の営利的行動も含まれると指摘しているが、正に卓見である。

著者は現在70歳とのことだが21時就寝、5時起床の規則正しい生活を維持していて、少なくとも85歳までは研究と言論活動を続けたいと考えており、本書を踏み台にして新たな高みを目指している(あとがきより)。本書はこれまでの膨大な著作を一覧できる良書であり、現場に根ざした日本オリジナルの学問体系の構築を目指す著者に心から期待する。

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