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スポーツ心臓症候群

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-15
伊藤健太 (東北大学大学院循環器先端医療開発学准教授)
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  • ■疾患メモ

    スポーツ心臓症候群とは,ほぼ毎日,おおむね1日1時間を超えるトレーニングを行う競技者にみられる生理的な適応反応で,心拡大や左室肥大,徐脈などの構造的・機能的変化を認める。

    スポーツ心臓や,アスリート心臓とも言われる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    通常,自覚症状は特にない。

    長距離走などの持久性トレーニングでは,心内腔の拡大を中心とした遠心性左室肥大を呈するとともに,主に迷走神経の緊張亢進により,安静時の心拍数,さらには最大レベル未満の運動時の心拍数が低下する。徐脈および運動時の静脈還流量増加による前負荷増加が,左室内腔の拡大に寄与するとされている。

    重量挙げなどの筋力トレーニングでは,左室壁の肥厚を中心とした求心性左室肥大を呈する。

    左室心尖拍動の側方偏位,1回拍出量増加に伴う収縮期駆出性心雑音,急速な拡張期心室充満による第Ⅲ心音,拡張期充満時間の延長による徐脈時の第Ⅳ心音,頸動脈拍動の増強などがみられる。

    【検査所見】

    〈心電図〉

    洞性徐脈(30~50拍/分)である。

    異所性心房調律や第Ⅰ度房室ブロック,ウェンケバッハ型第Ⅱ度房室ブロックがみられる。

    QRS波の高電位(左室肥大を反映)がみられる。

    再分極異常(副交感神経系優位による不均一な再分極を反映)がみられる。

    安静時の房室ブロックや再分極異常は,運動により心拍数が上昇すると軽減・消失することが多い。ただし,陰性T波の偽正常化は,心筋虚血を反映している可能性もあるため,高齢競技者では注意を要する。

    心電図の変化は,トレーニングの強度や心機能とは相関しない。

    〈胸部X線写真〉

    心陰影の拡大がある。通常,心胸郭比は55%を超えない。

    〈心エコー検査〉

    持久性トレーニングの場合,左室内腔の拡大。左室壁厚は保たれる。

    筋力トレーニングの場合,左室肥大。左室内腔の狭小化を伴わない。

    【診断】

    前項の徴候を認めた場合,心電図や心エコー検査,運動負荷試験で評価を行う。

    わが国におけるスポーツ関連突然死,特に若年者の突然死の原因は,肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)をはじめとする心疾患である。心臓突然死を起こしうる重篤な心疾患〔HCM,拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM),不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy:ARVC),左室緻密化障害(left ventricular noncompaction:LVNC),虚血性心疾患など〕は,スポーツ心臓症候群に類似する所見を呈するため鑑別を要する(1)

    04_58_スポーツ心臓症候群

    以前スポーツ選手であったとしても,運動をやめて何年も経っているのに心拡大や心肥大を認める場合は,スポーツ心臓よりも,ほかの心筋症を疑う。肥大型心筋症の頻度は,500人に1人と決して少なくない。スポーツ心臓症候群は除外診断である。

    トレーニングを中止すれば,1年程度で心肥大などの変化はもとに戻るが,一部には心拡大が残存する例もみられる。

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