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【私の一冊】現代に響く声 ビンゲンのヒルデガルト

No.4897 (2018年03月03日発行) P.65

飯嶋正広 (高円寺南診療所院長)

登録日: 2018-02-27

最終更新日: 2018-02-27

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修道女ヒルデガルトについて、その手紙の研究を通じて彼女の思想と活動を紹介した書。レジーヌ・ペルヌー著、2012年に聖母の騎士社より刊行

現代に息衝く知性と感性の源泉

日本医事新報コラム「私の一曲/一冊/一本」執筆の依頼を受け、音楽/書籍/映画、いずれ劣らず興味の尽きない三分野からの択一には当惑しました。幸い、診療机上で光彩を放っている、家内(薬剤師)推奨の本書に気づき救われました。

聖ヒルデガルトは中世ヨーロッパ最大の賢女。医師でドイツ薬草学の草分け。古代ローマ時代以降最初の本格的女性作曲家にして詩人かつ宗教劇(オペラの原型)作家。40歳頃「生ける光の影」の幻視体験をして、50歳頃ビンゲンで女子修道院を創立し総長に就任しました。

原著者の目的はさておき、巻末の索引が充実していて、様々な視点から楽しめます。

視点①12世紀のドイツ薬草学と漢方:「ナツメグと同量のシナモンと少量のチョウジノキを用意し、粉末にする。この粉末と小麦粉と少々の水で小さなガレットを作り、たびたび食べる。この薬は身体と精神の苦しみを和らげ、心をゆるやかにし、…有害な体液を減らし、良い血糖をもたらし、強める」。ナツメグ(肉荳蒄:にくずく)、シナモン(桂皮)、チョウジノキ(丁字)は、ペッパー(胡椒)とともに世界の4大スパイス。他にショウバク(小麦)も含めて漢方生薬との共通点が認められます。

視点②12世紀のドイツ医学:「病気ではなく病人を看護する心遣い、体内の変調の結果としての行動、人間的成長に必要な美と調和への配慮がヒルデガルトの思想に本質的なすべての原理」。ドイツ心身医学や全人医療の萌芽を12世紀まで遡れます。

視点③西洋音楽の源泉:ヒルデガルトの音楽は「グレゴリオ聖歌」の音調ですが、独創性に優れています。本書をもとに完成度の高い音楽CDや映画などを鑑賞すれば、ホリスティックな癒しの世界にも接近できることでしょう。

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