鬼才・岩明均による歴史伝奇SF漫画。写真は2011年に小学館文庫より刊行された第1巻(全3巻)
本作は、あの漫画『寄生獣』を描き上げた岩明均の次の作品だが、『寄生獣』があまりに素晴らしい傑作すぎたために、やや過小評価されているのではないかと思う。
たしかに『寄生獣』にあったようなスリリングな展開や「人間vs地球」という命題はなく、ほとんど全編にわたってのんびりとした雰囲気で話が進んでいく。しかし「丸神の里」という架空の地方の歴史にからめた物語は実に味わい深く、登場人物も皆個性豊かであり、主人公の穏やかな性格にも好感が持てる。前半は「あらゆるものに穴を空ける」というあまり役に立たない超能力と丸神の里の話が繋がらないので退屈な印象を受けるが、後半の丸神の里の謎がだんだんと解けていく過程は他の漫画の追随を許さないカタルシスがある。まさに歴史オタクとしての岩明均と、ストーリーテラーとしての岩明均の奇跡的な邂逅と言える。
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