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神武天皇のルーツを探る[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.114

藤田次郎 (琉球大学医学部附属病院病院長)

登録日: 2018-01-07

最終更新日: 2017-12-21

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病気の診断に際し、目の前にいる患者さんのルーツがわかれば、手掛かりが得られることがある。たとえば、沖縄県出身の70歳の男性が下痢を訴えていたら、糞線虫感染症を鑑別診断のひとつにあげ、また、鹿児島県出身者の末梢神経障害を診たら、HTLV-1感染症を考える、などである。

沖縄に赴任してから、不思議なことに初代天皇である神武天皇のことを身近に感じるようになった。おそらく、神武天皇のルーツは琉球と深く関係しているのであろう。夏休みに、宮崎県の西都原遺跡と奈良県の橿原神宮を訪れる機会があった。神武天皇とも関わりのある西都原遺跡の近くの地名に、久米田という地名があり、また、橿原神宮は橿原市久米町が所在地である。私はこの久米というのは、沖縄県の久米島と関連していると考えている。

すなわち、神武天皇の東征に、久米島の軍勢が加わったという説である。Yahoo検索で、神武天皇と久米島を入力すると同様の考えが記述されている。

さて、京都大学の日沼頼夫博士による、HTLV-1の分布図〔http://blog.goo.ne.jp/japanorigen/e/5a83192817264de788ca006b2f4abb7a〕を眺めていると面白いことに気づく。すなわち、島(対馬、五島列島、隠岐の島など)、または鹿児島、宮崎などの九州地方にHTLV-1ウイルスキャリアの比率が高い点である。私はHTLV-1ウイルスの分布から、日本の縄文人のルーツは沖縄(琉球王国)にあると確信している。また、琉球列島の島々(琉球弧)と黒潮の流れからなる「海上の道」がこの分布をつくったと考えている。

ちなみに、私の父親(鹿児島県出身)は内務省の役人として、いずれも神武天皇を祀る宮崎神宮と橿原神宮の改修の際に陣頭指揮を執った人物である。その息子である私が、神武天皇のルーツに思いを馳せるのも必然であろう。

私は、神武天皇の東征を助けたのは「海上の道」と久米島の軍勢であったこと、また、神武天皇のルーツは、巨大な天岩戸(クマヤ洞窟)のある伊平屋島ではないかと考えている。

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