私が医師を志した原点には、幼馴染のあやちゃんの存在がある。彼女は麻疹が原因で発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)に罹患し、長い入院生活の末に亡くなった。本人にも家族にも何の責任もなく、ただ不可抗力的に過酷な現実と向き合わざるをえなかったあやちゃんとその家族。その姿を見続けたことが、私の進路を決定づけた。
医師となり、救急の現場で命をつなぐ日々を重ねながらも、常に「その先にある人生」を意識するようになった。救命の後、社会の中で孤立し、行きたかった場所にも行けずに過ごす子どもたち。命は救えても、人生は閉ざされたままという現実がある。
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