株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

臨床栄養の重要性に、今一度目を向けてはいかがでしょう[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.51

平井敏弘 (川崎医療福祉大学医療技術学部臨床栄養学科特任教授)

登録日: 2018-01-03

最終更新日: 2017-12-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年2月23〜24日の2日間、第32回日本静脈経腸栄養学会学術集会を岡山市において開催させて頂きました。演題数は1850題、参加者は1万21人でした。栄養関連の学会では世界で最も大きな学術集会です。日本静脈経腸栄養学会の会員数は2万人を超えました。ただ、医師数は未だ4500人程度にとどまっています。

栄養療法は、あらゆる医療分野で治療や支持療法の根幹をなすものです。私は消化器外科医で、食道癌・胃癌の手術療法、化学療法を専門にしてきました。手術後合併症の多寡のみならず、その予後についても栄養支持療法は大きく関与してきますし、化学療法の成績も同様です。しかし、今まで栄養療法は、医師の間で比較的軽んじられてきたのではないでしょうか。その理由は、未だ学術的に十分な根拠に立脚していないから、と愚考いたします。

1991年に特定保健用食品(トクホ)の制度ができ、2001年より特定の栄養素を含んでいる栄養機能食品、2015年より科学的根拠をもとに表示ができる機能性表示食品が制度化され、多くの企業が参加し、様々な製品が市場に出されました。しかしながら、どのくらいの量を、どのくらい摂取すれば、どのような効果があるか、ということが科学的に立証される研究結果は多くはありません。また、このような研究成果が得られれば保険適用も視野に入るのでしょうが、そのハードルは高いと言わざるをえません。

たとえば、ある栄養素の効果を確かめようとしてランダム化比較試験を計画しようとすると、両群の背景因子をそろえることも、また、経過中の栄養素の摂取量をそろえることもかなり難しくなります。化学療法のランダム化比較試験と大きく異なる点です。このことが臨床研究を難しくし、研究者の参加が少なくなる理由かな、とも思います。

私たちは、in vitroである栄養素と抗癌剤との併用による相乗効果などに取り組んでいますが、実に興味深い結果を得ています。医療費の限られる中で、比較的低価格で提供できる栄養素の研究に、もっと多くの研究者に参加して頂けないものか、と強く願うこの頃です。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top