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医師の喫煙[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.25

尾﨑治夫 (東京都医師会会長)

登録日: 2018-01-02

最終更新日: 2017-12-20

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最新の調査によれば、国民の喫煙率は男性30%、女性も10%を切り、男女合わせて20%を切る時代に入った。喫煙者が国民の2割以下になった今、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて国レベルでの受動喫煙防止対策が一向に進まないのは、誠に嘆かわしい限りである。このことは、特に国会議員をはじめとするこうした議論の際のステークホルダーになっている方々に、きちんとしたタバコの害に対するリテラシーが欠如していることが、大きな原因のひとつと考える。

私ども東京都医師会では、今年度から始まった児童・生徒へのがん教育においても、禁煙の重要性をしっかりと訴え、将来を担う都民が健康リテラシーを身につけていく上で、必要かつ基本的な知識を学校医等を通じて得られるよう、積極的に活動していきたいと考えている。一方、我々医師の喫煙率はどうであろうか。

日本医師会が2016年度に行った会員に対する喫煙率の調査結果によると、男性医師は10.9%、女性医師は2.4%であった。科別の喫煙率(女性は母集団のばらつきが多いので、男性に限る)では、呼吸器内科3.5%、循環器内科8.4%をはじめとして内科系の医師が低く、泌尿器科17.5%、耳鼻咽喉科15.3%、精神科14.3%と外科系および精神科の医師の喫煙率が高い傾向にあった。国民の喫煙率に比べ、医師全体の喫煙率が低いことは当然とは言え、呼吸器内科3.5%、泌尿器科17.5%という差は、どこからきているのであろうか。

内科系の医師は、がん予防や生活習慣病の予防・治療に関わりが深い。一方、外科系や精神科の医師はそうではない、というのが原因のひとつであろう。しかしながら、わが国のリスク要因別の死亡率第1位は未だに喫煙である。医療者を代表する医師が、国民の生命を守り安全・安心を提供すべき医師が、喫煙に無関心であることは許されず、まして率先して禁煙すべき医師が未だ喫煙を続けていることは、時代の趨勢からみても如何なものであろうか?今なお喫煙を続けている医師に、改めてその姿勢を問いたい。

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