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「日本は性暴力被害者に対する医療が抜け落ちている」【この人に聞きたい】刑法改正と性暴力被害者支援(小西聖子・武蔵野大学人間科学部教授)

No.4864 (2017年07月15日発行) P.10

登録日: 2017-07-14

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  • 性暴力は身体・精神的被害が大きいのに
    日本は性暴力被害者に対する医療が抜け落ちている
    被害者支援体制を充実させることが必要

    この人に聞きたい

    〔略歴〕1977年東大教育学部卒、88年筑波大卒。93年東京医歯大難治疾患研究所犯罪被害者相談室長、99年より現職。日本トラウマティック・ストレス学会理事。『犯罪被害者の心の傷』(白水社)など著書多数

    先の国会で性犯罪に関する刑法の規定が1907年の制定以来、初めて大幅改正された。法改正を審議した法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会の委員で、日本の性犯罪被害者支援の第一人者である精神科医の小西聖子氏に聞いた。

    暴行・脅迫の要件が性暴力被害を潜在化

    ─改正刑法が7月13日に施行されました。ポイントは、①性犯罪の被害に性差は問わない、②監護者性交等罪、監護者わいせつ罪の新設、③非親告罪化─です。これをどう評価されますか。

    その3点については、実際の被害状況からすれば当然行われるべきこと。強姦罪の被害者は女性に限定されていましたが、実際には男性も被害を受けています。内閣府の調査(2015年)では、無理やり性交された経験がある女性は6.5%。統計はありませんが男性被害者は女性の1割くらいです。
    改正により強姦罪が「強制性交等罪」となり、口腔性交などの性交に類似した行為も処罰対象となったことも当然です。しかし、法改正によって性犯罪被害者が皆救われるということは考えにくい。
    大きな問題の1つが、強制性交等罪の条件に「暴行または脅迫を用いて」が残ったことです。これが多くの性暴力被害を潜在化させる要因になっています。現実には暴行・脅迫がなくても、加害者が怖くて言いなりにならざるをえなかった事例はたくさんあります。
    この点で、監護者性交等罪の新設は一歩前進です。これは、親など監護者が18歳未満の子どもに対して性行為に及んだ場合は、暴行・脅迫がなくても罪に問うものです。ただ、被害者の臨床をしていると、学校の教師や部活・クラブのコーチからの被害もかなりあります。そうしたケースは改正後も暴行・脅迫がないと罪に問えないのは問題。私は最低限、義務教育の教師は監護者と同様の扱いにすべきだと思いますし、将来的には「同意のない性的侵襲」が刑法の適用となることを望みます。

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