株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

「心のコンサート」5年のキ・セ・キ[プラタナス]

No.4863 (2017年07月08日発行) P.1

高藤早苗 (恵寿総合病院緩和医療科科長)

登録日: 2017-07-07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 「緩和ケアとは何?」と思っている方が大勢いる中で、どのようにして普及活動をしていったらいいのだろうか、どうしたら皆が喜んでくれるだろうかと悩んでいた時に、「高藤先生を元気づけるために、出張コンサートはいかが?」と、まるで夢のようなお誘いがあった。緩和ケア病棟で至福のひとときを下さったプロのピアニストからのお話である。思わず「私の夢が叶うのだ!」と心の中で叫んでしまった。プロが奏でる極上のひとときを味わっていただける時がやってきたのである。

    あれから5年、「心のコンサート」は数々の奇跡を残してくれた。「本物」の醸しだす力に圧倒され、今も余韻に浸っている。天から降り注ぐようなソプラノの声を初めて聴いた時、訳もなく涙がこぼれた。「宇宙戦艦ヤマト」の波動砲に打ち抜かれたようで、鬼の目にも涙とはこのことである。金婚式を迎える患者さんご夫婦だけのために病室で行われた演奏もあった。喉頭がん末期で、スタッフとの関係は決して良いとは言えなかったが、その後は、笑顔も増えスタッフに心を開いてくれた。




    病室で美しい歌声に涙していた患者さんが、数時間後に旅立たれた。急遽病室を訪れ、同じ曲でお別れした。泣きながらのメゾソプラノは、同じ曲なのに悲しみがひしひしと伝わってきた。患者さんもその場で耳を澄ませて聴いているような錯覚に陥った。

    残り397文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top