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(1)過重労働によるリスクとその対策【第1章 スタッフがメンタルを病むリスクを押さえておこう】[特集:診療所職員のメンタルヘルス対策]

No.4705 (2014年06月28日発行) P.20

編集: 奥田弘美 (精神科医(精神保健指定医)/日本医師会認定産業医。)

登録日: 2016-09-01

最終更新日: 2017-05-01

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  • 1 過重労働とは?

    人がメンタルを病む原因として,まず押さえておかねばならないリスクは過重労働です。
    過重労働とは,健康に障害が発生するほどの過重な負担を伴う労働のことです。
    現在,最も世間で問題となっている過重労働は長時間労働です。想像を絶するほどの長時間残業を連日させられて過労状態となり,時には過労死まで誘発させてしまう長時間労働問題はマスコミでもしばしば取り上げられます。
    しかし,過重労働とされるのはそればかりではありません。心身に悪影響を与えやすいストレスフルな業務はすべて過重労働にあたります。過重労働の種類を具体的に列挙してみます。

    (a)長時間労働

    月80時間以上の時間外・休日労働が連続する。休日出勤が続き休みがほとんど取れないなど長時間に及ぶ労働。
    全身が過労状態となり,脳も疲労するためにメンタル不調が出現しやすい。

    (b)不規則な業務

    始業時間や終業時間がバラバラ。緊急の呼び出しが入ったり,状況によっては深夜勤務が発生したりする。トラック運転手,医療スタッフ,警察官,記者などに多い。規則正しい生活ができないため,心身の調子が崩れやすい。
    また看護職,工場労働者,ホテル従業員など夜勤と日勤の交替制勤務も,日常生活が不規則となり体内時計が乱れて自律神経失調が起こりやすい。

    (c)出張の多い業務

    営業職,出向での技術職,全国や世界各地を飛び回る商社マンなど。
    長距離移動や高速移動および時差は自律神経に負担をかけてしまうため,心身の不調が発生しやすくなる。

    (d)人間関係のストレスが高い業務,精神的緊張度の激しい業務

    相談窓口などの受付業務。クレーム処理係,電話相談係,救急医療スタッフなど。
    人の罵声や文句,ネガティブな愚痴や悩みなどを連日聞かされると精神的なストレスが蓄積し抑うつ状態になりやすい。救急現場などの張りつめた緊張が続く職業も,交感神経の緊張が続くため自律神経不調が起こる原因になることもある。

    (e)厳しい作業環境(温度,騒音,時差)

    屋外工事現場,熱気のこもる鋳造所や厨房での労働,海外出張など。暑すぎる・寒すぎる温度,不快な騒音や振動,臭いなどに常時さらされる作業環境では,身体的負荷が高く過労するリスクが高まる。また,時差も自律神経を狂わせるため要注意。
    このような過重労働は,精神的・肉体的に大きな負担が発生します。
    特に医療現場で発生するリスクのある過重労働は(a)長時間労働,(b)不規則な業務,(d)人間関係のストレスが高い業務,精神的緊張度の激しい業務と考えます。
    次からは,これらの過重労働について詳しく考察していきたいと思います。

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