国立大学病院長会議は7月9日、都内で会見を開き2024年度決算の概要を発表した。2024年度決算では全国44の国立大学病院のうち29病院で赤字となった。全病院合計の経常利益はマイナス285億円。2023年度のマイナス60億円から大幅に悪化し、2004年の国立大学法人化以降最大の赤字額となった。会見に出席した大鳥精司会長(千葉大学医学部附属病院長)は国立大学病院の経営は「いかんともしがたい状況」であると強調し、「国立病院であっても、このまま支援がなければ間違いなく潰れる」と危機感を示した。
24年度の 44病院合計収益は1兆6203億円と、23年度から約547億円増加したが、合計費用は1兆6489億円と約773億円増加し、経常利益はマイナス285億円の赤字となった。22年度までは、限界利益(=病院収益-医療費)で人件費等の固定費を賄ってきたが、23年度以降固定費が限界利益を上回り、経営が圧迫されていると説明した。
大鳥会長は赤字増加の要因として、23年度中の新型コロナ補助金の廃止や24年度から開始された働き方改革による人件費の増加、医療材料費・医薬品費が増加する一方、診療報酬は一定であるため経費率の上昇が防げないことなどを指摘。多くの国立大学病院で経営難のため新たな医療機器が購入できず、施設整備が止まっていると現状を説明した。政府に対しては「補正予算を付ける必要がある」と要望。「26年度次期診療報酬改定ではこうした国立大学病院の現状を理解した上で、しっかりと反映してもらうことが大事だ」と強調し、医師派遣機能や高度医療対応への評価を求めた。
会見に同席した尾﨑誠氏(長崎大学病院院長)は、「国立大学病院の経営難の継続は、大学病院が守るべき地域医療の地盤沈下を招く恐れがある」との見解を示し「次期改定を待たないサポートが必要」と述べた。