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【書評】『診療所で診る皮膚疾患 第2版』

No.4854 (2017年05月06日発行) P.76

宮地良樹 (京都大学名誉教授)

登録日: 2017-05-06

最終更新日: 2017-04-27

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本書は、実践的な皮膚科診療教書としてきわめて好評を博した「診療所で診る皮膚疾患」(2011年刊行)の改訂第2版である。「はじめに」で著者が述べているように、本書は「普通の開業医」「一般病院の普通の医師」が日常的に遭遇するありふれた皮膚疾患にあえて焦点を絞っている。一方で「患者の愁訴」という視点から、これでもかというほど日常診療のスキルを惜しげもなく披瀝しているのが大きな特徴である。第1版が4刷を重ねたことからもわかるように、本書の人気の秘密は、著者が開業医生活の中で自ら確立したユニークな皮膚科診療手法を、実にクリアカットな切り口で小気味よく公開していることにあるだろう。その善意あふれるサービス精神には脱帽するばかりである。おそらく、日常診療で気づいたコツをこまめにメモしておき、本書の改訂にあわせて一気に放流したのだと思われる。

まず、冒頭の「皮膚科診療のための基本」と「皮膚科診療Q&A」では、まさに皮膚科診療のABCを、門外漢の医師にもわかるようかみ砕いて解説している。想像するに、これは彼が皮膚科に入局したときに抱いた素朴な疑問や不安を、自らの力で乗り越えてきた道のりを反芻しながら読者に優しく語りかけているのではないかと思われる。だからこそ、ツボを押さえた「かゆいところに手が届く」記載が可能なのであろう。

「患者の訴え別/疾患別 症状・対処法紹介」は「中村実践皮膚科学」の面目躍如たる部分で、遭遇頻度順に並べる手法は圧巻である。患者は発疹のことを「湿疹」と言ったり、足がかゆければ何でも水虫と思ったりするふしがある。その誤解を懇切丁寧に解きほぐしながら説明する様は、さながら著者の外来に陪席して勉強している気分になる。

「はじめに」で、「宮地本から多くの情報を取り入れている」と書いて頂いたが、私にはとても真似できない芸当である。

読み進むほどに惹き込まれる「中村節」の真骨頂を、この1冊でぜひ共有して頂きたい。

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