てんかんという病気があること自体は大勢の人に知られている。それでも、この疾患を正しく理解している人はまだ少ない。私たちはよく「100人に1人がてんかんです」という言い方をする。しかし、同僚や友人にてんかんをもつ人がいるという話を聞くことはあまりない。多くの人にとって、この病名を聞くのは、交通事故の報道に接する時かもしれない。そのため、この疾患に対して「危険である」と実情以上にネガティブなイメージをもつ人も未だ少なくない。その結果、てんかんをもつ人や家族の中には、患者であることを周囲に打ち明けられず孤立感を覚えている人がたくさんいる。
「てんかんが理由で就職できない」という相談に対し、医者は励ましの言葉をかける以外にできることはないのだろうか。情報がなく適切な治療を受けられずにいる患者がいても、私たちは診察室で手をこまねいていることしかできないのだろうか。自分にできることを探していた私が知ったのは、「パープルデー」というてんかんの啓発キャンペーンの存在だった。
「パープルデー」はカナダのキャシディー・メーガンさんという少女が発案した取り組みである。3月26日の記念日に紫色のものを身につけることで、てんかんをもつ人を応援しようというのがキャンペーンの趣旨だ。このアイデアに賛同した多くの人々や団体に支えられ、現在では北米のみならず世界各地で関連する講演会や参加型イベントが開催され、「パープルデー」はてんかんに馴染みのない人々からも注目を集める活動へと成長した。
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