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「裁判離婚」と「協議離婚」 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.16

五十嵐 隆 (国立成育医療研究センター理事長)

登録日: 2017-01-01

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わが国の離婚件数は年間25万件を超え、離婚が珍しくない時代になっています。わが国の人口1000人あたりの離婚件数は1.9で、主要諸国の中では7番目とのことです。ただし、結婚率と照合するとわが国では結婚したカップル3組のうち1組が離婚しています。離婚は子どもに精神的、経済的にきわめて大きな影響を及ぼします。

わが国の子どもの相対的貧困率は1985年に10.9 %だったのが2012年には16.4 %に増加しました。相対的貧困とは、社会での慣習的な、あるいは是認されている種類の食事、社会的諸活動への参加、生活するために必要な住環境などの条件などを欠く状態です。わが国の特徴は、一人親、特に母子家庭の子どもの相対的貧困率が高いことです。2011年の調査では、母子家庭の世帯あたりの平均年収は223万円、父子家庭では380万円でした。多くの母子家庭にとって、子どもの養育費が離婚した元夫から離婚後も支払われることは不可欠です。しかしながら、実際には子どもの養育費を子どもが18歳になるまで支払う元夫は、わが国では約2割です。一方、米国では約8割の元夫が養育費を支払っており、その多くが元夫の給与からの天引きにより支払われています。

先進諸国では養育する子どもがいる夫婦が離婚する場合、離婚時の合意事項を離婚後に遵守しない場合の罰則が明確化されている「裁判離婚」が原則です。一方、わが国では親同士だけの合意で離婚(「協議離婚」)できます。日本人は弁護士や裁判所を介することなく離婚したいと考える人が多いことも事実です。

しかしながら、離婚後の子どもと女性を経済面で守ることのできない危険性を持つ「協議離婚」で離婚できてしまうわが国は、先進諸国の中ではきわめて異例です。このような状態は、貧困から子どもを守るための社会的防御システムがわが国では整備されていないと言えるかもしれません。わが国の女性は、離婚後に子育てをする女性が法律の面で十分には守られていない事実を、まず知ることが必要です。

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