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周産期医療を担う医師、特に産科医師の不足について [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.73

山本樹生 (春日部医療センター病院長・産婦人科部長)

登録日: 2017-01-03

最終更新日: 2016-12-27

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産科医師の不足が止まらない状態である。妊娠・分娩に携わり、少子化時代には重要な仕事であるが、産科医をめざす医師が少ない。1つは産科医師の仕事が理解されていないからのように思われる。病院の上層部でさえ認識をしていない。

産科医師は分娩時、児を取り上げて、新生児の処置をするのがすべてのように思われているが、妊婦が無事に分娩し、児が無事に退院できるのはそれなりの対応をしているからである。

日本の妊産婦死亡率は、1899年の妊産婦10万人中409.8人から、2012年には1899年の1/100未満の4.0人にまで減少した。周産期死亡率は1980年の1000人当たり20.2から2013年の3.7にまで激減しており、この優秀さは世界一である。これは、今日までの産科医、新生児科医の努力のたまものである。

産科医の仕事は正常妊娠を確認し、感染症や合併症の有無を確認し、これらがあれば母児に影響する疾患を発見し治療する。妊娠前期に胎児の異常を発見し、両親と相談し対応をとる。たとえば、母体血DNA、血清マーカー、超音波などによる染色体異常の診断である。これには高度なテクニックと知識を要する。妊娠後期には胎児発育をチェックし、異常がある場合、原因の検索と対応を考える。妊娠高血圧症候群などが重症化すると子癇や脳出血など母体死亡に至るので、予知・予防・治療を行う。分娩時には弛緩出血や産道裂傷などによる大量出血を未然に防ぎ、母体を救命する。出生した児には新生児蘇生法を駆使し、児の予後改善を図る。分娩時に胎児機能不全があれば昼夜・土日なく帝王切開などを行う。

産科医は遺伝学、感染症、内科の知識、助産技術、手術などの技能、母体のみならず胎児に対する知識、治療法を駆使して患者に対応している。分娩は自費診療なので利益率は高いが、病院ではその評価はほとんどされていない。一時、産科は医療訴訟が多いので嫌う医師が多いと言われた。しかし、周産期センターや産科医療制度の充実、ガイドラインの作成、母体胎児専門医の養成などにより医療訴訟は激減した。日本の周産期医療は世界に誇れるものであるが、医学生、一般医師の評価は低く、また産科は初期研修必修からはずれた。これらが産科医不足の原因のひとつであると思う。

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