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ビジョナリー肥満症学 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.61

小川佳宏 (東京医科歯科大学教授、九州大学教授)

登録日: 2017-01-02

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第37回日本肥満学会学術集会を2016年10月7日(金)~10月8日(土)の2日間、東京ファッションタウン(東京台場)にて開催させて頂きました。本学術集会のキーワードは「ビジョナリー肥満症学─基礎から臨床、そして社会へ」です。「ビジョナリー」には未来志向型という思いを込めました。

肥満は「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」として定義されますが、研究対象としての脂肪組織には派手さがなくて退屈であり、臨床的にも肥満には重症感が乏しく、医師・研究者にはあまり注目されていませんでした。これが過去20年間あまりに大きく変化しました。研究の現場では、エネルギー代謝の神経科学、脂肪細胞の生物学、脂肪組織の内分泌学などの幅広い分野で飛躍的な進歩を遂げました。臨床の現場では、内臓脂肪型肥満やメタボリックシンドロームの概念の確立により、特定健康診査・特定保健指導が導入され、予防医学の観点で基礎研究の成果が社会還元されています。わが国の肥満研究は世界的にも最先端に位置しますが、私たちには社会実装を意識した研究活動も求められます。

肥満は多くの慢性疾患の基盤病態ですが、すべての肥満が合併症を発症する訳ではありません。日本肥満学会は、肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態を「肥満症」と定義しています。肥満の程度が軽いわが国において「肥満症」のコンセプトはきわめて先見性があり、欧米諸国の追随ではなく、わが国独自の肥満症学を堅持し、推進する必要があります。

近年、医学は臓器別・疾患別に専門化・複雑化され、多くの疾患の発症機構や病態生理が分子レベルで解明されました。これらの知見を踏まえて新しい診断法・治療法が開発され、正確な病態の把握と治療の最適化に大きく貢献しています。一方、臓器別に深化した医学に対して、臓器・疾患横断的な医学の重要性が再認識されています。

肥満は多くの慢性疾患の上流に存在し、肥満症学は臓器別・疾患別の医学の交差点に位置するものです。「ビジョナリー肥満症学」により、これからの統合的医学を考えるきっかけになればと願っています。

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