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健康長寿社会をめざして─核医学の挑戦 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.58

伊藤健吾 (国立長寿医療研究センター治験・臨床研究推進センターセンター長、第56回日本核医学会学術総会会長)

登録日: 2017-01-02

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「健康長寿社会をめざして─核医学の挑戦」は2016年11月3日(木)~5日(土)に名古屋で開催された第56回日本核医学会学術総会(第36回日本核医学技術学会総会学術大会と併催)のメインテーマである。

超高齢社会における喫緊の課題である認知症の領域でも、脳内のアミロイド沈着を可視化できるアミロイドPETなど、核医学の進歩は著しい。最新のアルツハイマー病の臨床診断基準では、糖代謝の指標であるFDG-PET、アミロイドPETが髄液のアミロイドβ、タウとともにバイオマーカーとして診断基準に組み入れられている。通常の診療では、これまでの臨床診断基準が基本ではあるが、より精度の高い診断を求める場合にはバイオマーカーの情報が必須と考えられている。
軽度認知障害など初期のアルツハイマー病の診断は特に難しく、バイオマーカーを組み入れた診断基準の有用性が高いと考えられるが、ヨーロッパの一部以外ではアミロイドPETの保険償還は認められておらず(日本ではFDG-PETも保険未収載)、高齢者では髄液検査の実施は必ずしも容易ではない。現状では、アミロイドPETは主に臨床研究やアルツハイマー病治療薬の臨床試験(治験)で利用されている。特に後者では、被験者選択のためにアミロイドPETが必須となっており、アミロイドPETなしでは治験が成立しないと言っても過言ではない。

アミロイドPETの有用性が明らかなのになぜ保険償還が認められないのか? 最大の理由は、使用可能なアルツハイマー病の治療薬が症状改善薬に限られており、病気の進行そのものを停止あるいは遅らせる病態修飾薬が承認されていないことが挙げられる。病態修飾薬が使用できない状況では、正しい診断による早期治療開始のメリット、トータルとしての医療経済効果などは評価困難でかつ限定的とならざるをえない。限られた医療費のパイの中で、アミロイドPETのような高価な新規技術を保険診療に導入するにあたってのハードルは高いが、認知症の制圧に向けて病態修飾薬とともに早期に承認され、認知症診療の新時代が始まることを期待している。

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