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ある日のワークショップ [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.42

代田浩之 (順天堂大学大学院医学研究科科長・医学部長)

登録日: 2017-01-02

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先日、ある製薬企業のワークショップに参加する機会があった。

現在開発中のすべてのパイプラインを紹介してその臨床現場への適用を確認するとともに、現在の医療でのunmet needsを掘り起こす目的である。全国から各領域の医師が集まって、ワークショップ形式で論議が進められていたが、いくつか感じたことがある。

1つは、その企業が開発中の薬剤の豊富さとスピードの速さである。欧米の製薬企業は吸収・合併を繰り返し巨大化してきたが、貪欲なまでの新薬開発への取り組み、世界のベンチャーや研究機関からの発信に即座に対応する姿勢が、企業をより大きく発展させてきた。わが国の乱立する(失礼!)製薬メーカーは個々にはとても対抗できる状況にない。ダイナミックな業界再編を再度考えるべきではないかと誰もが考えるのではないだろうか。もちろん、アカデミアでのシーズの開発力も重要である。基礎医学研究から創薬に至る効率的な開発機構の再整備はわが国では始まったばかりであるし、基礎医学の充実についても大隅良典先生のお話にもあったように、国を挙げて強化するべきところであるが、このワークショップでこのスピードで大丈夫か、若干心配が増した気がしている。

次にワークショップ形式の進行である。今でこそ少しは慣れてきたが、私のように昭和生まれで、教室の後ろのほうで授業を受けてきた者にとって、ワークショップ形式の進行様式は若干の居心地の悪さを感じる。これにグループごとの発表があると、かなりのパワーが必要だ。学生教育の分野でも最近ではactive learningが推奨されteam based learningなどの教育法が採用されて、学生は比較的このような教育法に慣れて、グループでの議論を含めより活発に講義が展開されているようであるが、教えるほうがこのような手法に慣れなければ有効な教育や議論はできない。教育者教育も課題のひとつである。

最後に英語教育についてである。このワークショップでは同時通訳がついて議論が進められたが、海外の学会、欧米企業の主宰するシンポジウムは英語での議論になる。最近の学会発表ではさすがに壇上絶句という姿は見なくなったが、日本人が真に議論ができているかと言うと必ずしもそうでもない。一方で、アジアの諸国は医学を英語で教えていることが多く、医師、学生の英語力はかなり優れている。この点からは日本はアジアの諸国に後れを取っているように思う。グローバル化が叫ばれ、わが国の英語教育にも変化が訪れているが、医学英語教育にはもう一工夫必要なのではないだろうか。

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