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リハビリテーション医学とinclusive society(寛容社会) [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.41

久保俊一 (日本リハビリテーション医学会理事長、京都府立医科大学副学長)

登録日: 2017-01-02

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あけましておめでとうございます。昨年6月より、日本リハビリテーション医学会において理事長を務めさせて頂いております。本医学会は1963(昭和38)年に任意団体として発足し、2012(平成24)年には公益社団法人として認可されました。そして2013(平成25)年には設立50周年を迎え、既に半世紀を超える歴史を積み重ねてまいりました。

大正時代後期の小児の「療育」を源流とした日本のリハビリテーション医学・医療において、第二次世界大戦中は切断を中心に青年が、戦後の復興期には労働災害や交通事故による脊髄損傷など成人が、高度成長期を経て高齢化を迎えた現在では高齢者が大きな比重を占めるに至っています。健康寿命の延伸が社会の大きな課題となり、今やすべての人にとって障害は自分自身の問題として避けて通れない人生の課題となっています。

リハビリテーション医学について、日本リハビリテーション医学会初代理事長である故津山直一先生は、「障害の実態とその人の生き方全体のかかわりあいを科学的に捉え、合理的な解決を求める医学である」と述べておられます。障害の程度と生活の質は決して同期するものではありません。昨年のパラリンピックでは身体に「障害」を抱えた選手たちが生き生きと輝いている姿が目に焼き付きました。

QOL、すなわち生活の質の評価にアンケート方式のSF36という方法がよく用いられます。その中では、身体機能や痛みに加えて日常生活の中で自分が社会的な役割を果たせたと感じているかどうかを評価する項目も多く含まれています。

社会への参加を実感できることは、遍く人間の幸福に欠かせません。情けは人の為ならず、との言葉があります。人が社会の中で生きていくとき、社会への役割を果たせていると感じられることは大切です。すなわち「利他」の実感こそ、最高の「自利」とも言えます。

人々が障害のあるなしにかかわらず「利他」を実感できれば、inclusive society(寛容社会)の実現にもつながります。リハビリテーション医学・医療が果たす役割はきわめて大きいと思います。

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