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医師の需給 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.19

平川弘聖 (大阪市立大学医学部附属病院病院長)

登録日: 2017-01-01

最終更新日: 2016-12-27

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大学入学時点で将来の職業や、どの方向に進むか明確に考えている人は少ないと思うが、医療系の場合はそういう訳にはいかない。医師、看護師や薬剤師など当然卒後の方向性は決まっているといっても過言ではない。最近では社会人を経験して医療系をめざす人もいるが、多くは卒後それぞれの国家資格を取り、同時に社会人としてスタートする。大半の医師は医療の現場に従事しているが、様々な事情で別の道に進む人も結構おられる。基礎系の研究職や医療行政職は重要な進路であるが、意外と後で医師の資格も持っていることに気づく作家、政治家、稀ではあるが弁護士の方もおられる。しかし、さすがに俳優、芸能人(バラエティでは?)やプロスポーツ選手にはいないようである。免許を持っていても、昨今の超高齢社会では名ばかりの医師も年々増加しており、他人事ではないように思う。

厚労省のデータでは平成26年末の医師数は31万人余り、そのうち約20万人が病院で、約10万人が診療所での従事者である。男女比の現状は女性医師が20%であるが、39歳以下では3人に1人であり、今後増加するのは間違いない。診療科別に見ると平成6年と比べても医師数が相当増えているが、最も増えているのは意外と足らないといわれてきた麻酔科であり、小児科は微増、外科は横ばいで産婦人科に至っては微減である。若い医師が選択しないということは、その診療科の高齢化が進んでいくことを示唆している。

一方、平成20年から医師偏在解消策等を踏まえ医学部入学定員増が始まり、来年度には1600人超の増員となる。また来年から予定されていた増員停止も凍結され、さらに2校の新設医大が開校することで、しばらくこれまで以上に医師の増加が続くようである。厚労省の試算では様々なことを想定しているが、2020年代には絶対数としては医師の需給は満たされ、その後は過剰時代を迎えることになるが、診療科や地域の格差を考慮する必要がある。2025年以降の問題を念頭に置きながら、これまで以上に医療に関わる人的な課題や様々な制度改革が、より一層複雑になる予感がする。

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