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地元に戻ってきてみて思ったこと [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.126

菅沼明彦 (杏林病院内科)

登録日: 2017-01-04

最終更新日: 2016-12-26

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つい1年ほど前まで、東京の病院で勤務していた私は、昨年4月より地元の長崎県に戻ってきました。正確に言うと私の実家は長崎市なのですが、現在は佐世保市のハウステンボスに程近い場所で、地域医療に携わっています。東京と比べると、空気と食べ物がおいしく、わが家の奥様は、とてもこの地を気に入っています。特に、野菜とお魚は、まさに「安くて新鮮」です。親との物理的距離も縮まり、以前より頻繁に会うことができるようになりました。おかげで、私の49歳の誕生日を、何十年か振りに親と一緒に祝うことができました。不便な点は、大都市以外の「地方」で開催される学会へのアクセスが悪いことです。地方から地方への移動は大変で、東京の便利さを、事あるごとに実感します。

私の仕事は、東京でHIV感染症、抗酸菌感染症、熱帯感染症などの診療に従事していたときとは、大きく変わりました。現在は、慢性疾患を中心とした内科全般の診療にあたっています。上京する前にも長崎市内の病院で勤務していましたが、その時と比べて、入院患者さんの年齢層が、きわめて高くなっていることに驚きました。地域には介護施設の数が格段に増え、そちらから紹介される超高齢の患者さんが多くなっています。

ということで、現在は、主として高齢者医療について日々勉強させて頂いています。診断は、問診が8割と言われますが、高齢者の方々は、ご自身の言葉で、症状や既往歴などを語ることが容易ではありません。少ない情報を元に診療をせざるをえない場合も多いのが現実です。そうした中で、きちんと身体所見をとり、頻回に患者さんと接して、症状の変化を見ることなどの、当たり前のことを積み重ねていくことの大切さを、日々実感しています。

高齢者の方は、同時に、あるいは続発して複数の疾患が出てくることが稀ではなく、予想外の経過に遭遇して戸惑うことも少なくありません。長崎に来て印象的なことのひとつは、様々な場面で偽痛風に遭遇することです。内科疾患の治療中に現れ、時に私の頭を混乱させてくれます。頸部痛を呈するcrowned dens syndromeは、教科書の中の珍しい病気と思っていましたが、長崎に来て半年で2例も遭遇しました。

最近は、こんな感じで日常を過ごしておりますが、現在経験していることが、これまでに培われた経験とうまく融合して、自分の視界がより広く、より鮮明になっていくことを信じつつ、診療を行っております。

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