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電子カルテはあまねく普及するか? [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.106

水関隆也 (広島県立障害者リハビリテーションセンター顧問)

登録日: 2017-01-04

最終更新日: 2016-12-26

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安倍首相は2016年6月、アベノミクスの第三の矢として「日本再興戦略」を閣議決定した。その中で、「2020年度までに400床以上の一般病院における電子カルテ(以下、電カル)の全国普及率を90%に引き上げる」などの具体的な目標を挙げた。大規模病院で導入が進めば、放っておいても中小規模病院では引きずられるように導入が進むと目論んでいるのだろうが、果たして皮算用通りいくであろうか?

最近、300床足らずのわがセンターもリニューアルを機に、IT化の一環として、電カルを導入した。導入の際に感じた、そして今でも感じているわが国における電カルの医療経済上の問題点と、システム上の問題点を指摘したい。

まず最も大きい問題点として指摘したいのが、莫大な導入経費と理不尽な管理・維持費である。わが国における大手電カル市場はF社がほぼ寡占している状況で、価格競争がないに等しい。電カル導入時の費用は10年前も今もほとんど変化がない。われわれが個人で使うPC本体やソフトウェアの価格低下、機能向上などを考えてみればありえないことで、F社の経営姿勢を疑わざるをえない。

電カルと聞けば医師および医療従事者は、日常業務の効率化、医療過誤の防止に有用であることを期待する。ところが導入された電カルの操作はきわめて複雑で、また効率的な手順を外れている。既に個人のPCでデータベースソフトの使用に慣れた者にとっては遠回りな操作が多すぎることにイラつく。何より致命的な欠点は、検索機能がほぼないに等しい点だ。臨床研究には病名、薬品、キーワード検索などの機能は必須であるが、電カル端末ではこれができない。何度指摘しても業者の反応は鈍い。

導入から1年以上経った現在でも、現場から不平・不満が後を絶たない。本来であれば、使い勝手の悪い電カルシステムであれば、使い勝手のいいシステムに入れ替えるべきだが、ここで大きな壁にぶち当たる。電カル会社によって使うデータフォーマットが異なるので、蓄積した患者データを他社のフォーマットに転換するには莫大な費用を要すると脅かされる。かくして、F社は経営努力なくして顧客の囲い込みに成功している訳である。

予算規模の大きい大病院では経済的負担に耐えられるかもしれないが、中小病院では電カル導入によって経営が傾くことさえ起こっている。TPP参加によって外国企業の本格的参入を待つか、または国主導による電カルシステムの価格引き下げ指導を待つか?どうもこの業界には競争原理は働きそうにない。

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