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【私の一冊】『歌集 与楽』

No.4757 (2015年06月27日発行) P.77

松村讓兒 (杏林大学医学部肉眼解剖学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

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  • 作者は1953年生まれ。早稲田大学在学中に歌人・窪田章一郎に出会い、短歌の道に入る。高等学校の国語教師の傍ら窪田主宰の短歌誌「まひる野」同人・運営委員を務める。2010年、第二歌集『施無畏』(砂子屋書房)で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
    柳 宣宏 第一歌集(砂子屋書房、2003年刊)

    自然としての人を詠う

    私たちは自然の中に生きている。というより、私たち自身が自然の一部であり、自然そのものでもある。当たり前のことだが、いや、だからこそ、ふだんは意識さえしない。ふだん忘れている「自然としての自分」は、「独り」のときに湧き上がってくる。本を読んでいるとき、映画を見ているとき、音楽を聴いているとき私たちは「独り」になる。

    歌集『与楽』は「自然」を詠ったものである。一見すると、作者の目がとらえた日常を題材にしているようだが、伝わってくるのは作者自身の心情であり、真情、信条である。

    本書の扉を開いて最初に目に入るのは、

    ‌とんぼには名がありません、太い尾に海のひかりを曳いて飛びます

    という歌である。歌の意味を解釈するつもりもないが、この歌を目にしたときの印象は「見てくれや評価など自然にとって何の意味もない」というものである。

    残り302文字あります

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