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aHUS治療の進歩

No.4734 (2015年01月17日発行) P.57

岡本孝之 (北海道大学小児科)

有賀 正 (海道大学小児科教授)

登録日: 2015-01-17

最終更新日: 2016-10-26

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近年,補体第二経路の異常による補体活性化の制御不能が非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の原因となることが明らかにされた。
HUSの大多数は,志賀毒素を産生する腸管出血性大腸菌による下痢を伴うHUS(typical HUS)である。一方,typical HUSとADAMTS13活性著減による血栓性血小板減少性紫斑病を除いた血栓性微小血管障害をaHUSと定義する(文献1)。aHUSはHUS全体の10%を占め,約50%が末期腎不全や不可逆的な脳障害に至り,25%が急性期に死亡する。近年,約半数の症例で補体,補体制御因子(C3,CFB,CFH,CFI,MCP,THBD)遺伝子の異常,補体制御因子に対する自己抗体(抗CFH抗体,抗CFI抗体)が発症に関与することが明らかにされた(文献2)。また最近では,血小板活性化に必須のアラキドン酸代謝経路シグナルを遮断する蛋白の遺伝子異常(DGKE)による発症も報告されている。
aHUSの治療は全身管理と基礎疾患に対する治療であり(文献3),補体制御因子の異常によるaHUSに対しては発症早期の血漿投与(血漿輸注/血漿交換)が推奨されている。また,補体活性化の最終点に位置するC5の活性化を阻害する分子標的治療薬(抗C5モノクローナル抗体:エクリズマブ)の有効例が近年では多数報告されている。わが国では2013年9月にaHUSの治療薬として承認された。今後の治療経験蓄積やさらなる病態解明によってaHUSの治療戦略が変わっていく可能性が高い。

【文献】


1) 香美祥二, 他:日腎会誌. 2013;55(2):91-3.
2) Noris M, et al:Nat Rev Nephrol. 2012;8(11): 622-33.
3) 溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン作成班, 編:溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン. 東京医学社, 2014.

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